フザレノンーXが免疫系組織・器官に与える影響

要約

飼料に由来する有害物資の動物の免疫系に与える影響を明らかにするため,フザリウム属真菌の生産するマイコトキシンの一種であるフザレノン-X(fusarenon-X)をマウスに投与したところ,胸腺皮質の未分化なT細胞の著しい減少を主徴とする免疫系への影響が明らかにされた。

  • 担当: 家衛試・飼料安全性研究部・慢性毒性研
  • 連絡先:0298-38-7819
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生理
  • 対象:実験動物
  • 分類:研究

背景・ねらい

飼料等の安全性の確保のため,多様化する化学物質および混入するおそれのある有害物質の毒性を評価する手法の開発改良が求められている。近年,多くの化学物質が動物やヒトの免疫系組織・器官あるいは機能に影響をおよぼすこと(免疫毒性)が明らかにされている。アフラトキシンやトリコテセン系トキシンもそのような作用をもつことが推測されている。そこで,フザレノン-Xを短期間マウスに投与したときの免疫系臓器における組織学的変化および免疫機能の変化について検討した。

成果の内容・特徴

DDDマウスに体重kgあたり3000μg,750μgおよび0μgのフザレノン-X(FX)を腹腔内に2日毎に3回注射し,3日後に検査した。(1)臓器重量の変化では,胸腺重量が著しく減少していた。胸腺と脾臓の組織学的変化を見ると,胸腺では投与量に応じて皮質の著しい萎縮とリンパ球数の減少が観察され(図1),脾臓では,血管周囲のリンパ組織(Tリンパ球依存域)におけるリンパ球の減少傾向が認められた。(2)胸腺および脾臓細胞を,ヘルパーT細胞のマーカーであるCD4およびキラーT細胞のマーカーであるCD8に対する単クローン抗体で染色しフローサイトメーターで分析したところ,胸腺においては,CD4とCD8のいずれも陽性の細胞数(double positive T細胞)の著減が認められた(表1,図2左)。(3)脾臓においては,T細胞の構成に大きな変化は認められなかった図2右。(4)フザレノン-Xを投与したマウスの脾臓細胞を培養し,T細胞を増殖させるマイトジェンで刺激した後のIL-2(T細胞増殖因子)の産生をみると,フィトヘマグルチニン(PHA)刺激の場合,対照に比べてやや低下する傾向が認められた(表2)。すなわち,フザレノン-Xを動物に暴露したとき,胸腺において,ヘルパーT細胞やキラーT細胞の前駆細胞を強く傷害することが明らかとなった。この障害機構を知るため,マウスの胸腺由来株化細胞の培養にフザレノン-Xを微量添加すると,アポトーシスにみられるのと同様の核の断片化が認められた。

成果の活用面・留意点

この実験により,フザレノン-Xの動物に対する有害作用の一つとして免疫系組織や機能に障害をあたえることが明らかになった。フザレノン-Xは,トリコテセン系トキシンの一つであるが,これ以外のマイコトキシンも免疫機能の低下を引き起こすことが疑われているので,各種のマイコトキシンについても検討する必要がある。

具体的データ

表1 FX投与マウスにおける胸腺細胞集団の変化

図1 ヘマトキリンエオジン染色

図2 L3T4はマウスCD4を、Lyt-2は同じくCD8を、PE,FITCは蛍光色素を示す

表2 FX投与マウス脾細胞のPHA刺激後のIL-2産生能

その他

  • 研究課題名:免疫機能を利用した安全性評価手法の検討
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成5年度(平成2年度~平成5年度)
  • 発表論文等:マイコトキシンfusarenon-Xのマウス免疫系組織における影響,
                      第113回日本獣医学会講演要旨集,p.191(1992).