子牛由来大腸菌の下痢原性の解析

要約

子牛由来大腸菌の保有する病原性遺伝子と下痢原性の関連を検討したところ、eaeA、VT両遺伝子あるいはそのいずれかを保有する菌株は幼若ウサギの腸管に定着し下痢を惹起した。よって、これら大腸菌は下痢関連病原体であることが示唆された。

  • 担当:家畜衛生試験場飼料安全性研究部飼料汚染微生物研究室
  • 連絡先:0298(38)7815
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:指導

背景・ねらい

大腸菌は動物の腸管に常在する腸内細菌科の一菌種であり、単に下痢便から分離されただけでは原因菌か否かを決定できない。一方、これまでの研究成績の集積により下痢に関与する本菌の病原因子とその遺伝子が特定され、検出法がほぼ確立されつつある。しかし、病原性遺伝子の存在と動物に対する病原性発現との関連は必ずしも明白でないことがあり、診断を紛らわしくしている。そこで、下痢子牛より分離された大腸菌について、最近存在が明らかとなったeaeA遺伝子を含む病原性関連遺伝子を検索するとともに、これらの遺伝子保有株の総体的な病原性を幼若ウサギ経口感染系を用いて検討し、遺伝子保有と下痢発現の関連性を調べた。

成果の内容・特徴

  • 下痢子牛由来大腸菌7株の9つの病原性遺伝子についてPCR法でその存在を検索したところ、7株中4株にeaeA(外膜タンパクintimin産生遺伝子)が検出され、内3株は同時にVT(ベロ毒素産生遺伝子)を保有した。また、1株はVT遺伝子のみを保有していた(表)。
  • 病原性遺伝子陽性株および陰性株の109個を各々生後6日齢の幼若ウサギに経口投与したところ、eaeA+、VT+の3株、eaeA+、VT-およびeaeA-、VT+の各1株は菌投与48~60時間後に下痢を惹起し(表、写真)、eaeA+株は腸粘膜に定着し自然感染例と類似の腸病変を形成した。また、eaeA-、VT+株では腸病変不在であるものの投与菌の腸管内定着像が観察された。しかし、eaeA-、VT-の2株は下痢も腸内定着像も認められなかった。これら事実は、本菌の感染にeae産物(intimin)とそれ以外の付着関連因子がかかわっていることを示唆している。
  • 幼若ウサギ経口感染系は、病変の出現率が高く、下痢の判定が容易であることなどから、ウシ由来eaeA陽性大腸菌およびVT陽性大腸菌の総体的な病原性を解明できる優れたモデルであることも示唆している。

成果の活用面・留意点

eaeAおよびVT遺伝子の存在と下痢の関連が明らかとなったことから、両遺伝子の検出は大腸菌性下痢の診断の一助になると考えられる。しかし、野外で発生する下痢の原因は多様であるので、より総合的な検索が必要である。

具体的データ

表.病原性関連遺伝子の保有と下痢発現の関連

 

写真.大腸菌の投与により下痢を呈する幼若ウサギおよび対照幼若ウサギ

 

その他

  • 研究課題名:温暖地の肉用牛におけるベロ毒素産生性大腸菌の病原病理学的検討
  • 予算区分:経常[場内プロ]
  • 研究期間:平成6年度~平成7年度
  • 発表論文等:1.感染症学雑誌、69: 772ー776 (1995)