ウシ寄生性大型ピロプラズマ原虫(Babesia ovata)のDNA鑑別診断

要約

大型ピロプラズマ原虫 Babesia ovata のゲノムDNAライブラリーから,本原虫 に特異的なDNA断片をクローニングした。得られたクローンは,約100 pgの原虫DNA(8x103の原虫体に相当)を検出可能性であり,B. ovataの鑑別診断用プローブとして有用であることが示唆された。

  • 担当:家畜衛生試験場研究第一部原虫第1研究室
  • 連絡先:0298(38)7753
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

大型ピロプラズマ原虫(Babesia ovata)は全国の牧野に分布し,主に小型ピロプラズマ原虫(Theileria sergenti) との混合感染によってウシに重度の貧血をもたらすことから,放牧衛生上重要な病原体の一つと考えられている。大型ピロプラズマ病の予防には抗原虫剤と殺ダニ剤とを併用する方法が用いられているが,これらを有効に実施するためには牧野の汚染状況を的確に把握する必要がある。しかし,本病の診断は主として血液塗沫上での原虫検出,血清反応,臨床所見によっており,的確な診断が困難な場合が多い。また,牛の輸入拡大にともなう外国産強毒原虫,特に家畜伝染病予防法施行規則で指定されているB. bovisならびにB. bigeminaの国内への浸潤・蔓延を防止するためにも感染原虫を迅速に鑑別診断する必要がある。これらのことから,DNAを利用した高感度の原虫鑑別診断法の開発が要望されている。

成果の内容・特徴

  • B. ovata(三宅株)のゲノムDNAライブラリーをλZAPIIを用いて作製した。ライブラリーをB. ovata およびB. bigemina(東風平株)のゲノムDNAをプローブとしてスクリーニングしたところ,前者とのみ反応するクローンが9個検出された。これらのうち,特に強い反応を示す2クローン BOZAP 6 および BOZAP 7 の挿入DNA断片,それぞれ 3.6 kb および 5.0 kb をプラスミドにサブクローニングし,それらのDNAプローブとしての有用性を検討した。
  • Eco RIで消化した B. ovata DNAとのサザンハイブリダイゼーションにおいて両プローブはともに10以上の断片と反応した。(図 1)
  • BOZAP 6 および 7 はともにB. bigemina,B. bovis,Theileria sergenti, T.  buffeli, T. orientalis, Anaplasma marginale, A. centrale, Eperythrozoon wenyoniおよびウシ白血球 DNA 100 ng と反応しなかった。(図 2)
  • OZAP 6 および 7 は,それぞれ 62pgおよび 125pg のB. ovata DNAを検出可能であった(図3)。

成果の活用面・留意点

今回選択されたゲノムDNAクローンBOZAP 6および 7はB. ovataに特異的な反復配列のクローンである可能性があり,本原虫の鑑別診断用プローブとして有用であることが示唆された。Digoxigenin (DIG)などの化学物質で標識したDNAプローブを用いたドットハイブリダイゼーション法は,大型ピロプラズマ原虫の迅速な鑑別診断法として広く普及可能であると考えられる。

具体的データ

図1.Babesia ovataゲノムDNAプローブ(BOZAP6,BOZAP 7)とEcoRIで消化したBabesia DNAとのサザンハイブリダイゼーションの成績

 

図2.DNAブローブとウシ寄生性住血原虫およびウシ白血球DNA 100ngとの反応性

 

図3.DNAプローブと大型ピロプラズマ原虫DNAとの反応性

 

その他

  • 研究課題名:牛のピロプラズマ病のDNA診断技術の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度
  • 発表論文等:
    1.J. Protozool. Res., 3: 64-68, (1993)