高度病原性伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス感染鶏の病理学的変化の解明

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要約

わが国で分離された鶏の伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス高度病原性株の感染実験をSPF(特定病原体フリー)鶏を用いて実施し,高度病原性株による本病の病理学的特徴を明らかにした。

  • 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 感染病理研究室
  • 連絡先:0298(38)7837
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:鶏
  • 分類:指導

背景・ねらい

伝染性ファブリキウス嚢病(Infectious bursal disease;IBD)は若齢鶏の急性ウイルス感染症である。高度病原性IBDウイルスによる本病は1980年代後半から欧州で,1990年頃からわが 国で流行し始めた高致死性の感染症である。原因ウイルスは欧州及びわが国で分離されているが,診断やワクチンの有効性を検討するための基礎資料となる感染 鶏の病理学的変化はこれまで不明であった。本課題では,わが国で新たに分離されたウイルス株を用いてSPF鶏の感染実験を行い,感染鶏の病理学的検査を実 施し,本ウイルスの病原性を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • わが国で新たに分離された高度病原性株(Ehime/91株)及び1972年に分離された従来型の病原性株(J1株)を用いてSPF鶏(3週齢)の感染実 験を行い,感染鶏の病理学的変化及びウイルス抗原の組織内分布を検査した。各株とも同様のファブリキウス嚢萎縮を起こすが,Ehime/91株はJ1株よ りも著しいファブリキウス嚢の壊死,炎症(図1),胸腺の萎縮(表1)及びその他のリンパ・造血臓器の重度の病変をもたらすことが明らかとなった。また,免疫組織学的検査により( 表2,図2),ウイルス抗原は各株感染鶏のファブリキウス嚢,盲腸扁桃,胸腺,脾臓及び骨髄で検出されたが,Ehime/91株感染鶏においては,ウイルス抗原は脾臓及 び骨髄でJ1株感染鶏よりも高頻度に検出されることが明らかとなった。透過型電子顕微鏡観察により,ウイルス粒子はファブリキウス嚢のリンパ球,マクロ ファージの他に,胸腺の上皮性細網細胞及び骨髄の単球様細胞の細胞質内に認められることが明らかとなった。
  • Ehime/91株感染鶏の病理変化を欧州で分離された高度病原性株(DV86株)感染鶏と比較したところ,病理組織学的変化及びウイルス抗原の組織内分布は同様であることが判明した。

成果の活用面・留意点

わが国で新たに分離された高度病原性ウイルス株の病原性に関して,病理変化及びウイルス抗原分布の特徴が明らかとなったことから,本病の病理診断及び発病機序解明に必要な基礎資料が得られた。

具体的データ

図1 J1株及びEhime/91株感染鶏のファブリキウス嚢

表1 伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスJ1株及びEhime/91株感染鶏のファブリキウス嚢及び胸腺の重量指数の変化

表2 伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスJ1株及びEhime/91株感染鶏のリンパ組織におけるウイルス抗原の免疫組織化学的検出結果

図2 ファブリキウス嚢におけるウイルス抗原の検出

その他

  • 研究課題名:高度病原性伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス感染鶏の病理学的変化の解明
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成5~平成7年度
  • 発表論文等:
      1.International symposium on infectious bursal disease and infectious anaemia, p.143-152(1994)
      2.Avian Dis. 39:9-20(1995)