牛ウイルス性下痢ウイルス持続感染牛由来卵子を用いた体外受精系におけるウイルス増殖部位の解明

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要約

牛ウイルス性下痢(BVD)ウイルス持続感染牛から採取した卵胞上皮(FE)細胞付着卵子を用いて体外受精を行い,その胚発生の過程においてBVDウイルスがFE細胞で増殖していることを明らかにした。しかし,初期胚の胚細胞ではBVDウイルスの増殖は認められないことが示唆された。

  • 担当:家畜衛生試験場 東北支場 第一研究室
  • 連絡先:0176-62-5115
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:指導

背景・ねらい

牛ウイルス性下痢(BVD)ウイルスは野外では牛に持続感染した状態で存在し,持続感染母牛が持続感染子牛を出産することが知られている。しかし,持続感 染牛より採取された胚盤胞は正常な受胚牛に移植されると正常な子牛を出産することが報告されている。近年,畜産界では体外受精(IVF)により胚を作製 し,その移植による子牛の生産も行われていることから,このIVF技術を利用してBVDウイルス持続感染牛から初期胚を作製し,BVDウイルスの垂直感染 を遮断する可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  • 持続感染牛卵巣より採取した卵胞上皮(FE)細胞付着未成熟卵子(以下卵子と略す)を常法により体外受精を行い,その経過を観察したところ,ウイ ルスはFE細胞で増殖していることが示された。しかし,培養最終日の10日目に採取した初期胚(媒精日を培養1日目とする)からのウイルス分離は陰性だっ た(表)。
  • 持続感染牛卵巣より採取した卵子を洗浄後,チャンバースライドで4日間培養し,FE細胞の単層細胞を作成した。このFE細胞の細胞質に蛍光抗体法で明瞭なウイルス抗原が検出された(写真)。一方,対照とした正常牛由来卵子におけるFE細胞からウイルス抗原は検出されなかった。

成果の活用面・留意点

BVDウイルス持続感染牛から採取されるFE細胞には本ウイルスが感染しているが,IVFで作製された初期胚には感染していない可能性が示された。従っ て,FE細胞を除去するIVFの手法を用いて胚盤胞を作製し移植するならば,本病の垂直感染防止に有効であると考えられる。

具体的データ

表 BVDウイルス持続感染牛由来卵子を用いた体外受精系の各過程におけるウイルス力価

写真 BVDウイルス持続感染牛由来FE細胞の細胞質内に認められたウイルス抗原

その他

  • 研究課題名:体外受精卵における牛ウイルス性下痢ウイルスの感染機序の解明
  • 予算区分:経常研究(場内プロジェクト研究)
  • 研究期間:平成7年度(平成6年度~平成7年度)
  • 発表論文等:
      1.第119回日本獣医学会講演要旨集,p.122 (1995)
      2.第121回日本獣医学会講演要旨集,p.129 (1996)
      3.第3回日本胚移植研究会講演要旨集,p.12-13 (1996)
      4.Vet.Microbiol., 49 : 127-134 (1996)