わが国の牛及びめん羊に発生したブルータング

要約

1994年8月中旬~10月にかけ北関東地方の牛及びめん羊にブルータングが発生し,発生頭数は最終的に牛23頭,めん羊22頭に達した。

  • 担当:家畜衛生試験場 製剤研究部 ウイルス製剤研究室
  • 連絡先:0298(38)7859
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:肉用牛
  • 分類:行政

背景・ねらい

国際重要伝染病のひとつであるブルータングは,わが国では九州地方において飼養牛からウイルスが分離され,疫学調査から毎年抗体陽転していることが明ら かにされている。しかし,病気そのものは確認されていなかった。今回の発生について北関東地方での疫学調査及び発生の実態解明を行った。

成果の内容・特徴

  • 牛での発生は,高齢牛の黒毛和種のみで8月中旬に始まり栃木県下の5頭,茨城県下の14頭,福島県下の4頭に確認され,10月下旬に終息した。さらにめん羊の発生は栃木県下の一牧場で10月下旬頃から11月中旬にかけ,生後8ヶ月から7歳にわたり認められた。
  • 発病牛及びめん羊の症状は発熱,食欲不振,流涎,顔面浮腫,口角部の痂皮形成とともに嚥下障害を伴っていた。発病剖検例の病理組織学的所見では,病変は食道に限局し食道横紋筋線維の硝子様変性,断裂,リンパ球の浸潤などが認められるとともに筋繊維の再生像も観察された。
  • 発病牛及び同居牛の血液からのウイルス分離を試みたが陰性であった。そこで,McColl,Gouldらの方法に準じNested-PCR法によるブルータング遺伝子の検出を試みたところ目的とするPCR産物が検出された。
  • 発症めん羊の血液を接種した発育鶏卵鶏胚の頭部,四肢の末端部に出血が認められ,さらにその組織乳剤をVero細胞に接種したところCPEを示す3株のブルータングウイルスが分離された。なお分離株は同定試験の結果,血清タイプ21であった。
  • 発生3県における飼養牛のブルータングウイルスに対する抗体の保有状況を寒天ゲル内沈降反応により調査したところ流行地を中心に高い陽性率を示した。また,発生のあった栃木県下のめん羊農場では発症めん羊群での陽性率が高かった。
    (図1)
    (図2)

成果の活用面・留意点

今回,わが国で初めて発生したブルータングの症例は,牛及びめん羊に嚥下障害を伴ったイバラキ病様の症状が観察された。過去,牛における嚥下障害はイバ ラキ病の特徴とされていたがブルータングでも同様の症状がみられることから類症鑑別には十分留意する必要がある。また,今回の発生では牛異常産の症例は明 らかにできなかったが,ブルータングウイルスと牛異常産の関連が強く示唆されており,今後もブルータングウイルスの関与とその動向には注意する必要があ る。

具体的データ

図1 発症牛の咽喉頭麻痺、食道麻痺による嚥下障害のため飲水が逆流する

図2 食道横紋筋の硝子様変性、断裂および再生像が見られる

その他

  • 研究課題名:牛の吸血昆虫媒介性ウイルス疾病における高品質ワクチンの開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成6年~7年度(平成4年~8年度)
  • 発表論文等:
    1.第119回日本獣医学会講演要旨集,(1995)
    2.第120回日本獣医学会講演要旨集,(1996)
    3.An outbreak of Bluetongue in Cattle in Japan.
      Bluetongue Disease in Southeast Asia and the Pacific
      ACIR Proceedings, 66:p.42 (1996)