牛M-CSF遺伝子のクローニングとバキュロウイルス発現系による組換え型M-CSFの生産

要約

単球,マクロファージを分化・成熟させる牛のM-CSFのcDNAをクローニングした。さらに,このcDNAをバキュロウイルス発現ベクターに組み込み,生理活性の有する組換え型M-CSFを生産した。

  • 担当:家畜衛生試験場生体防御研究部分子病理研究室
  • 連絡先:0298(38)7781
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生体防除
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

Macrophage colony-stimulating factor (M-CSF)は,骨髄の前駆細胞に作用して単球,マクロファージを分化・成熟及び活性化させるサイトカインの一つである。したがって,牛の生体防御機構における単球,マクロファージの役割の解明には,M-CSFの生理作用を調べることが重要となる。さらに,このようなM-CSFの生体への応用は,単球,マクロファージの活性化によって生体防御機能を増強し,日和見感染症や幼獣の下痢等の発症予防や症状の低減に役立つことが期待される。このような観点から,牛のM-CSFのcDNAをクローニングし,組換え型M-CSFをバキュロウイルス発現系を用いて生産した。

成果の内容・特徴

  • 人とマウスのM-CSFのアミノ酸配列の相同部位から作製した混合プライマーと、牛のTPAで刺激した単核細胞のRNAを用いてRT-PCRを実施し,増幅したDNAをcDNAライブラリーのクローニングのためのプローブとした。クローニングされたcDNAは5'端が欠如していたため,RACE法を用いて欠損配列を明らかにした。次に,この塩基配列を基に開始コドンを含むセンスと終始コドンを含むアンチセンスプライマーを設計し,RT-PCRによって完全長の牛のM-CSFcDNAを増幅し,プラスミドにクローニングした(図1)。
  • 牛のM-CSFの-32番から第214番までのアミノ酸をコードするcDNAを含んだ組換えバキュロウイルスを作成し,昆虫細胞に感染させ細胞培養上清を得た。SDS-PAGEの結果,合成された蛋白質の分子量は34kDで(図2),N末端の10アミノ酸配列は導入したcDNAから作られる蛋白質のアミノ酸配列と一致した。また,非還元下でSDS-PAGEを行い,さらに抗ヒトM-CSF抗体を用いてウエスタンブロッティングを実施したところ,68kDの蛋白質を検出したことからホモダイマーで分泌されることが判明した。
  • マウスの骨髄細胞を用いてコロニーアッセイを行ったところ,大型の細胞からなるコロニーとマクロファージ様の形態を持つ細胞を含むコロニー(図3)が観察された。以上の結果から,生理活性を持つ牛の組換えM-CSFの生産が確認された。

成果の活用面・留意点

組換え型牛M-CSFの生産に成功したことから,牛におけるM-CSFの生理作用や生体防御機構に対する役割が解明され,マクロファージの活性化による感染防御を目指した臨床応用が期待される。

具体的データ

図1.M-CSFのアミノ酸配列

 

図2.培養上漬のSDS-PAGEによる解析34kDaの組換えM-CSFが確認された。

図3.コロニーアッセイで出現した細胞

その他

  • 研究課題名:動物の造血促進因子遺伝子の構造解析
  • 予算区分:バイテク(動物ゲノム)
  • 研究期間:平成6年度~平成9年度
  • 発表論文等:Yoshihara K.et al., Cloning and sequencing of cDNA encoding bovine macrophage colonystimulating factor (bM-CSF) and expression of recombinant bM-CSF using baculovirus. Vet.Immunol.Immunopathol., 63:381-391(1998)