マウス乳腺炎モデルを用いた乳房炎の病理学的解明

要約

ブドウ球菌感染によるマウス乳腺炎の病変形成に,免疫抑制酸性蛋白の関与が示唆された。免疫抑制剤サイクロフォスファミドを投与したマウスでは,ブドウ球菌性乳腺炎は化膿性病変からきわめて重度の壊死性病変へと組織像が変化したので,Bリンパ球の役割が重要であることが示された。

  • 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 非感染病理研究室
  • 連絡先:0298(38)7843
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

ブドウ球菌感染による牛乳房炎の病変形成には,炎症細胞とさまざまな生理活性物質が関与していることが示唆されているが,これらの物質の活性化機序および機能状態については不明な点が多い。そこで,マウス乳腺炎モデルを用いて乳腺病変の形成機構を検討するとともに病変形成に関与する免疫担当細胞と生理活性物質の役割を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 泌乳中の雌成マウス(BALB/c)の乳管内に黄色ブドウ球菌を接種し,接種後1時間から21日目まで経時的に剖検した。血清中の急性期蛋白である免疫抑 制酸性蛋白(IAP)は,乳腺の化膿性病変形成と関連して接種後12時間から7日目まではコントロールよりも高い値を示したので (図1) ,黄色ブドウ球菌感染時の乳腺の病変形成に免疫抑制酸性蛋白が関与することが示唆された。
  • B細胞を抑制するサイクロフォスファミド10~100mg/kgを前投与したマウスの乳腺には化膿性病変があった。400mg/kgを前投与したものでは広範囲な無反応性の壊死性病変だけが認められ (図2) ,200mg/kgを前投与したマウスでは両方の病変がみられた。乳腺中の黄色ブドウ球菌数は,10~100mg/kgを前投与したもので103~105CFU/g,200~400mg/kgを前投与したもので107CFU/gであった。
  • T細胞を抑制するサイクロスポリンA12.5~100mg/kgを前投与したマウスの乳腺では,投与量が多いほど病変はより重度となったが,化膿性病巣のみからなっていた。

成果の活用面・留意点

    ブドウ球菌感染によるマウス乳腺炎の病変形成に関与する免疫抑制酸性蛋白の経時的変化と,リンパ系細胞の亜群の役割を明らかにした。この成績はブドウ球菌感染による牛乳房炎の診断および予防策確立の際に有益な資料となる。

具体的データ

図1 免疫抑制酸性蛋白(IAP)の経時的変化

図2 サイクロフォスファミド400mg/kg前投与したマウスの乳腺に見られた壊死性病変

その他

  • 研究課題名:マウス乳腺炎モデルを用いた乳房炎の病理学的解明
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成10年度 (平成9年~10年)
  • 発表論文等:
      1.第124回日本獣医学会講演要旨集, p.217 (1997)
      2.Jap. Agric. Res. Q.
    33:139-142(1999)