遺伝性肥満型インスリン非依存性糖尿病モデル,KKマウスの遺伝学的解析

要約

KKマウスは肥満型インスリン非依存性糖尿病の多因子性疾患モデルマウスである。このマウスにおける疾病の原因遺伝子を明らかにするためゲノムマッピング(QTL解析)を行い,肥満に関与する遺伝子座(QTL)を第4番および第6番染色体に同定した。

  • 担当:家畜衛生試験場 生体防御研究部 疾患モデル動物研究室
  • 連絡先:0298(38)7741
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生体防御
  • 対象:実験動物
  • 分類:研究

背景・ねらい

KKマウスは肥満型インスリン非依存性糖尿病の疾患モデルマウスである。その発症は多数の遺伝子により制御されていると考えられている。従来,このような複雑な遺伝的支配を受ける形質の遺伝学的解析は困難であったが,QTL(Quantitative Trait Locus)マッピング法を用いたげっ歯類実験動物における多因子性疾患の遺伝的解析が現在進展している。 マウスにおいては,単一遺伝子の変異に起因する5つの肥満遺伝子が知られており,レプチンを中心とする摂食行動・体重の調節機構が明らかにされている。その一つ,アグーチ座の変異としてAy (Ay allele at the agouti locus, yellow gene)が知られている。Ayマウスでは,アグーチペプチドが異所性に発現しており,メラノコルチン4レセプター(MC4R)のアンタゴニストとしてαMSH作用を障害することにより肥満を発症させると考えられており,この解析から,レプチンシグナル伝達系の一端が明らかにされつつある。このAyをKKマウスの遺伝的背景に導入することにより,KKマウスの示す肥満・糖尿病が一層悪化することが知られている。本研究では,KKマウスにおける肥満・インスリン非依存性糖尿病・高脂血症などに関わる遺伝子座のQTL解析を行った。

成果の内容・特徴

    図1 実験に使用したマウス
  • 60日齢時体重に関する二つの遺伝子座を第4番および第6番染色体に同定し,各々をBwq1(Body weight QTL #1)およびBwq2と命名した。Bwq2はAy alleleの存在下でのみ検出され,6ヶ月齢時の体重・体脂肪量・体脂肪率のすべてに関与したことから,αMSH・MC4R代謝経路に関連していることが推察される  。
  • Bwq1近傍には候補と考えられる既知遺伝子座は皆無である。Bwq2近傍にはTnf1r, Glut3, Pparg遺伝子が存在する。
  • 高血糖の原因の一つは肥満である。KKマウスにおいて,血糖値に関与する遺伝子座を同定したが,体重に関与する遺伝子座とは異なった。

成果の活用面・留意点

    現在,Bwq1, Bwq2の原因遺伝子を解明しようと考えている。コレステロール等の血中レベルを司る遺伝子・遺伝子 座を既に同定しており,これによって肥満と代謝異常との関わりの一端を明らかにできたと考える。さらに別種のマウス系統における解析を進行させており,い わゆるヒト生活習慣病や,家畜の代謝性疾患の解明に貢献すると考えられる。

具体的データ

図1 実験に使用したマウス

その他

  • 研究課題名:連鎖解析による多因子性疾患関連遺伝子の検索
  • 予算区分:バイテク[動物ゲノム]
  • 研究期間:平成9年~12年
  • 発表論文等:
      1.Suto, J., et al. : Genetics of obesity in KK mouse and effects of Ay allele on quantitative regulation. Mamm. Genome 9 : 506-510 (1998)
      2.Suto, J., et al. : Genetic analysis of non-insulin-dependent diabetes mellitus in KK and KK-Ay mice. Eur. J. Endocrinol. 139 : 654-661 (1998)
      3.Suto, J., et al. : Quantitative trait loci that regulate plasma lipid concentration in hereditary obese KK and KK-Ay mice. Biochim. Biophys. Acta 1453 : 385-395 (1999)