非細胞病原性牛ウイルス性下痢ウイルスに対する牛初期胚細胞の感受性

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要約

牛初期胚の発生初期の段階である2細胞期または4細胞期の胚細胞(透明帯除去)は非細胞病原性牛ウイルス性下痢ウイルスに対し,感受性が低いことが示唆された。一方,脱出胚盤胞の一部の胚細胞は本ウイルスが感染することが明らかになった。

  • 担当:家畜衛生試験場 総合診断研究部 病原診断研究室
  • 連絡先:0298-38-7798
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:乳用牛・肉用
  • 対象:研究

背景・ねらい

と畜場で採取した牛卵巣より卵子を採取し,体外で胚の発生を行ったり,あるいは体内由来胚を体外で培養することが行われている。一方,非細胞病原性牛ウイルス性下痢 (NCP BVD)ウイルスは牛胎仔血清や卵胞上皮細胞に存在する危険性があることが報告されている。そこでNCPBVDウイルスに対する牛初期胚細胞の感受性について,発生初期の2または4細胞期胚と透明帯脱出直後の胚盤胞に区別し検討した。

成果の内容・特徴

  • 胚発生の最初の段階である2または4細胞期胚の透明帯を除去後,これらの胚細胞にNCP BVDウイルス(No.12株)を曝露し,24時間後のウイルスの増殖性について検討した。その結果,ウイルス分離・抗原検出とも陽性例は認められず,これらの2または4細胞期胚は感受性が低く,感染しないことが示唆された(表)。
  • 透明帯より脱出直後の胚盤胞では,1.と同様な処理により,その一部の胚細胞の細胞質に明瞭なウイルス抗原を認めるとともに,ウイルス分離も陽性を示した。すなわち牛胚盤胞の一部の胚細胞にはNCP BVDウイルスの感染増殖が起こりうることが示された(表・写真)。
  • 2または4細胞期胚並びに脱出胚盤胞のNCP BVDウイルス曝露後24時間の胚発生を観察したところ,両細胞とともに非曝露の対照群における発生と大差なく,胚の発生が可能であることが示された。

成果の活用面・留意点

脱出胚盤胞の一部の胚細胞はNCPBVDウイルスが感染可能であることが明確になり,胚盤胞作製のための培養や脱出胚盤胞の発生工学的操作において,本ウ イルスの汚染に注意する必要がある。一方,透明帯を除去した2または4細胞期胚は感受性がない可能性が示され,透明帯が感染防御作用を有するのみならず,胚細胞自身も感染しにくいことが示唆される。

具体的データ

表1 NCP BVDウイルス曝露透明帯除去初期胚からのウイルス分離及びウイルス抗原検出

写真 NCP BVDウイルス曝露牛脱出胚盤胞の一部の胚細胞の細胞質内に認められたウイルス抗原

その他

  • 研究課題名:牛ウイルス性下痢-粘膜病ウイルス持続感染雌牛における初期胚及び生殖細胞感染機構の解明
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成10年度(平成9年度~平成11年度)
  • 発表論文等:
    1.4th International Meeting on Hepatitis C and Related Viruses, Program & Abstracts,p.231 (1997)
    2.Theriogenology,49 : p.253 (1998)
    3.Vet. Rec.,142 : 114-115 (1998)
    4.第126回日本獣医学会講演要旨集,p.179 (1998)