ウシKitレセプターに対するモノクローナル抗体の作製

要約

バキュロウイルスをもちいて作製したウシKitタンパク質をマウスに免疫し,最終的に6クローンの抗ウシKitレセプターモノクローナル抗体を得た。そのうち4クローンがSCFに対する中和活性を有していた。

  • 担当:家畜衛生試験場 生体防御研究部 免疫細胞研究室
  • 連絡先:0298(38)7790
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生体防御
  • 対象:牛
  • 対象:研究

背景・ねらい

サイトカインのひとつであるstem cell factor(SCF)は,骨髄の造血細胞に作用して,顆粒球,単球,リンパ球等の免疫関連細胞の増殖を促進するため,ウシ生体防御機能の向上への応用が期待される。SCFは標的細胞上の受容体であるKitレセプターに結合することにより生物活性を発揮することから,ウシ生体防御機構におけるSCFの生物学的役割の解明には,Kitレセプターの解析が不可欠である。そこで,ウシKitレセプターに対するモノクローナル抗体(mAb)を作製し,その性状を解析した。

成果の内容・特徴

  • ウシKitレセプターの細胞外領域をコードするcDNAを含む組換えバキュロウイルスを作製し,昆虫細胞に感染させ,培養上清から組換えウシKitタンパク質を得た。これをマウスに免疫し,膝下リンパ節よりハイブリドーマを作製し,mAbを得た。
  • COS細胞にウシKitタンパク質を発現させ(COSbKit細胞),得られたmAbを用いて免疫蛍光染色と免疫沈降をおこなった。その結果,6クローンのmAb(bK1~bK6)がCOSbKit細胞を特異的に染色し(図1),ウシKitレセプターと考えられるタンパク質を免疫沈降した(図2)。
  • ウシ骨髄細胞をSCFを含む半固形培地で7日間培養したところ,コロニーの形成が認められた。これにmAbを添加したところ,6クローン中4クローンのmAbがコロニーの形成を抑えた(表1)。

以上のことから,ウシKitレセプターを認識するmAbが6クローン得られ,そのうち4クローンはSCFの生物活性を抑えることが示された。

成果の活用面・留意点

得られたmAbをもちいて,Kitレセプターを発現している造血細胞を同定・分取・解析することが可能となった。このことは,SCFを投与して顆粒球等を増加させる等,ウシの生体防御機能の向上を図るための基礎的知見につながると考えられる。一方,得られたmAbは,Kitレセプターを発現している他の種類の細胞(非特異的な免疫応答に関わる肥満細胞,生殖巣中の未分化な生殖細胞など)の同定・分取にも利用し得るものと思われる。

具体的データ

図1 mAbをもchじいた免疫蛍光染色

図2 mAbをもちいた免疫蛍光:(A)COSbKit細胞と(B)COS細胞

表

その他

  • 研究課題名:ウシc-kit遺伝子の機能解析
  • 予算区分:ゲノム関係研究(動物ゲノム)
  • 研究期間:平成6~12年度
  • 発表論文等:
    1.Hikono et al. : Production and characterization of monoclonal antibodies that recognize bovine Kit receptor. Vet. Immunol. Immunopathol., 68 : 101-112 (1999)
    2.彦野 他,「ウシ由来c-kitタンパク質に対するモノクローナル抗体とそれを用いた細胞分離法」特許2997770号,平成11年11月5日