バキュロウイルス遺伝子発現系におけるウシインターフェロンーτの糖鎖構造の改変

要約

ウシインターフェロンーτ(boIFN-τ)を昆虫細胞で発現させる際,ガラクトシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼ遺伝子導入昆虫細胞株を用いることにより発現タンパク質の糖鎖構造を昆虫型から哺乳類型へと改変した。

  • 担当:家畜衛生試験場 製剤研究部 製剤工学研究室
  • 連絡先:0298(38)7864
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 対象:研究

背景・ねらい

バキュロウイルスー昆虫細胞発現系はタンパク質の生産に広く利用されている。しかし 昆虫細胞内で付加されるN結合型糖鎖は,昆虫細胞がガラクトシルトランスフェ ラーゼ(GT)およびシアリルトランスフェラーゼ(ST)活性を欠くため, 図1 の経路1に示すようにトリマンノシルコアとなるとされている。糖鎖は動物体内での活性や安定性において重要な役割を果たしていると考えられるので,哺乳類に投与する ためには哺乳類型糖鎖を持つ必要が生じる可能性がある。そこで哺乳動物細胞由来の 組換え型タンパク質を経路2によってコンプレックス型糖鎖が付加された形で発現させるため,N結合型糖鎖結合部位を1カ所有するboIFN-τをモデルとし,GT遺伝子およ びST遺伝子導入昆虫細胞株を用いた発現生産を試みた。

成果の内容・特徴

  • boIFN-τ遺伝子組換えバキュロウイルス(AcBIFNτ)を作成し,Sf21AE(Sf)細胞を用いて約22kDaの組換えboIFN-τ(rboIFN-τ)を発現させた( 図2 )。
  • Sfβ4Gal/α2.6ST細胞(beta-1,4-GT遺伝子およびalpha-2.6-ST遺伝子導入Sf細胞株 :Dr. Jarvisより分与された)にAcBIFNtを感染させたところ,糖鎖構造の差違によると思われる約23.3kDaのバンドが検出された( 図2 )。これが,rboIFN-τであることをウエスタンブロット法により確認した。
  • ペルオキシダーゼ標識したConA,RCA-120,SNAを用いたレクチンブロットを行い,それぞれマンノース,ガラクトース,シアル酸の検出を行った( 図3 )。 Sf細胞由来のrboIFN-τはConAと強く反応し,さらにRCA-120およびSNAとも非常に弱くではあるが反応したことから,Sf細胞が低いながらもGT活性,ST活性を有することは示された。また,Sfβ4Gal/α2.6ST細胞ではRCA-120, SNAとの反応性が増強されており,発現したrboIFN-τの糖鎖がトリマンノシルコアからコンプレックス型へと改変されたことが示唆された。
  • 培養上清を用いてプラーク減少法によりrboIFN-τの抗ウイルス活性を測定したところ,どちらの細胞で発現させたrboIFN-τも同程度の活性を示し,糖鎖構造はboIFN-τの抗ウイルス活性にはほとんど影響しないことが明らかとなった( 図4 )。

成果の活用面・留意点

昆虫細胞でコンプレックス型糖鎖をもったタンパク質を発現させることが可能となった。臨床応用の際にバキュロウイルス発現系タンパク質に哺乳類型糖鎖を付加する必要がある場合,本法を用いて付加することができる。さらに,付加された哺乳類型糖鎖の構造や付加効率について検討する必要がある。

具体的データ

図1 N型糖類のプロセッシング

図2 ウシインターフェロン-τの発現

図3 ウシインターフェロン-τのレクチンプロット

図4 ウシインターフェロン-τの抗ウイルス活性

その他

  • 研究課題名:家畜サイトカンの糖鎖構造が生理活性及び安定性へ示す影響の解析
  • 予算区分:バイテク(糖質工学)
  • 研究期間:平成7年度~平成12年度
  • 発表論文等:
    1.第22回日本分子生物学会要旨集,p.753 (1999)