ウシ胎仔脳細胞の初代培養と凍結保存技術の開発

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要約

ウシ胎仔脳を材料として,神経細胞,アストログリア,ミクログリア等を初代培養する技術を開発した。また,胎仔脳組織を液体窒素中で凍結保存した後でも,ほぼ同様に初代培養が可能であった。

  • 家畜衛生試験場 生体防御研究部 免疫遺伝研究室 (現 生物資源研究所 生体防御研究グループ 分子免疫研究チーム)
  • 連絡先:0298(38)7801
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生理
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

ウシ胎仔に大脳欠損等の異常を引き起こすウイルスが知られているが,これらのウイルスの影響を詳細に解析するための中枢神経系細胞の初代培養技術は,ウシではまだ確立されていない。そこで,ウシ胎仔脳を材料として,神経細胞,アストログリア,ミクログリア等を初代培養する技術の開発を目指した。また,こ の初代培養技術をより広範な研究に適用可能とするために,ウシ胎仔脳組織の凍結保存技術についても検討した。

成果の内容・特徴

  • 胎齢120日前後のウシ胎仔小脳皮質をパパイン処理し,ウシ胎仔血清(FBS)を含む培地,あるいは上皮成長因子(EGF)を添加した無血清培地などで培養したところ,いずれの場合も神経細胞,アストログリア,ミクログリア等が培養できた (図1)。 無血清培地を用いた場合では,神経細胞の占める割合が最も高くなり,一方FBSを含む培地ではアストログリアやミクログリアの占める割合が高くなった (図2A)。
  • 細切したウシ胎仔脳組織をジメチルスルフォキシド(10%)とFBS(10%)を含む凍結用培地に縣濁して凍結した。これらの胎仔脳組織を解凍して用いた場合でも,神経細胞,アストログリア,ミクログリアは,新鮮な脳を用いた場合とほぼ同程度の割合で培養できた (図2B) 。このことから,凍結保存したウシ胎仔脳組織から必要に応じて脳細胞を初代培養し,種々の解析に用いることができると示唆された。

成果の活用面・留意点

  • この初代培養系を用いて,ウシの中枢神経系に異常を引き起こすウイルスや原虫等の挙動や脳細胞へおよぼす影響などについて詳細に解析することができる。
  • ウシ胎仔脳組織を液体窒素中で凍結保存しておき,いつでも必要に応じて培養を開始し,種々の試験に用いることができる。

具体的データ

図1 ウシ胎仔の脳細胞の初代培養

図2 新鮮および凍結保存ウシ胎仔脳組織の初代培養における各種細胞の割合

 

その他

  • 研究課題名:培養神経細胞を用いた脳機能異常解析のための基盤技術の開発
  • 予算区分:科技庁・総合研究[脳機能]
  • 研究期間:平成7年~9年度
  • 発表論文等:
    1) Res. Vet. Sci. 69: 39-46 (2000)
    2) J. Vet. Med. Sci. 62: 347-351(2000)
    3) Vet. Microbiol. 73: 269-279 (2000)