クリプトスポリジウムオオシストは畜糞堆肥処理で消毒できる

要約

家畜の糞便中に排出される人畜共通感染症のクリプトスポリジウムオオシストは,消毒剤には強いが,畜糞の堆肥作成過程で発生する発酵熱によって容易に破壊され,感染力を失っていた。従って堆肥処理法は ,環境に配慮した本原虫の消毒法であると考えられた

  • キーワード:クリプトスポリジウム,オオシスト,消毒,堆肥,発酵熱
  • 担当:動衛研・疫学研究部・予防疫学研究室,感染病研究部・原虫病研究室
  • 連絡先:0298-38-7769
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

クリプトスポリジウムは人や動物に激しい下痢を起こす病原体で,糞便中に排出されるオオシストが感染源となる。オオシストは一般の消毒剤では死なず,大きさが4ミクロンと小さいことから ,水道水処理でも除去できず人の集団感染を起こす。そのため,畜産現場からのオオシストの拡散を防ぐことが重要であるが,消毒には加熱処理が必要なため,通常行っている畜糞堆肥化による発酵熱で消毒が可能かどうかを検討した。

成果の内容・特徴

  • クリプトスポリジウムオオシストは,45℃以上1日間(45℃では最短6時間)の加熱処理で乳飲みマウスに対する感染性を失っていた。
  • 牛糞290kgに籾殻50kgを混ぜて堆積型堆肥を作成した。その頂上部表面,頂上直下20cm及び40cmの深さに小容器に入れたオオシストを置き1週間ごとの切り返し時に小容器を回収して ,オオシストの感染性の有無は乳飲みマウスに2×105個を経口投与して検査した。また,各点の温度変化も調べた。
  • 堆肥頂上直下20cm及び40cmでは最初の1週間で45℃以上に温度が上昇したが,表面は40℃以下と比較的低温で推移した。発酵温度は,第3週目に最高となり ,表面でも45℃を越えた(図1)。
  • 回収した材料は,頂上直下20cm及び40cmでは1週目でオオシストが蔗糖液浮遊法で検出されなくなっていたが,表面に置いたオオシストは,3週間目になってオオシストが検出されなくなった(図2)。
  • 牛糞堆肥の表面では,1週間ではオオシストの感染性は認められたが,2週目以降はオオシストの感染性が失われ有効であった。深さ20cm及び40cmでは,1週間目からオオシストの感染性は失われていた(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 環境や水道水汚染の一因とされる家畜由来クリプトスポリジウムオオシストは,畜糞を適切に堆肥化することにより感染性を失う。この技術は従来から行われてきた糞便処理をそのまま応用できるため ,新たなコストを必要としないため有用である。
  • 堆肥表面の温度は気温による影響が大きいので,適時切り返しを行って,表面の部分が堆肥内部に入るように注意する必要がある。

具体的データ

図1 堆肥の温度変化

 

表1 牛糞堆肥中のオオシストの感染性

 

図2 堆肥化処理前後の糞便材料におけオオシストの顕微鏡観察

 

その他

  • 研究課題名:畜舎環境におけるクリプトスポリジウム等有害微生物の消毒条件の検討
  • 予算区分:交付金プロ(畜産環境負荷)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:志村亀夫,筒井俊之,太田方人,金平克史,神尾次彦,山根逸郎