免疫磁気ビーズを用いた RT-PCRによる牛コロナウイルスとロタウイルスの検出

要約

抗牛コロナウイルスあるいは牛ロタウイルス抗体を結合したprotein A 結合磁気ビーズを用いて下痢便中の抗原を捕捉し,煮沸することによって簡単にウイルス遺伝子を得ることができた。これを鋳型としてRT-PCRを行い高率にウイルスを検出できた。

  • キーワード:磁気ビーズ,RT-PCR,牛コロナウイルス,牛ロタウイルス
  • 担当:動衛研・北海道支所・臨床微生物研究室
  • 連絡先:011-851-5226
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

家畜の下痢症は多大な経済的損失を与えているが,その原因はウイルス,細菌,環境要因など多岐にわたる上に複合感染もあるため,発生時には的確な診断を基に防除対策をたてる必要がある。通常 ,糞便から牛コロナウイルス(BCV)や牛ロタウイルス (BRV)の分離は簡単ではない。そこで今回,特異抗体と磁気ビーズを利用した簡便で迅速なウイルス(遺伝子)検出法を検討した。

成果の内容・特徴

  • モノクローナルあるいはポリクローナル抗体を結合させたprotein A 結合磁気ビーズをウイルスと反応させ(37℃,30分),3回洗浄後に少量のRNase-free DW (30μl)を加えて煮沸(5~10分)・急冷してウイルスRNAを回収し ,RT-PCRを行った。本法はRNA抽出キットに比べ操作ステップが少なく操作時間も短かった。また,操作が簡便なため核酸抽出時に起こりうる各検体間 のcross-contaminationを最小限に押えることができることや有害物質を使用しないなどの利点があった。
  • 抗BCVマウスモノクローナル抗体,ポリクローナル抗体(抗BCVモルモット及びウサギIgG)をそれぞれ1検体当り10μg結合させたprotein A結合磁気ビーズを用いて ,ウイルス液からのBCV遺伝子 の検出感度を調べた。また,単にウイルス液を煮沸した場合(煮沸法)とRNA抽出キット(TRIzol)の検出感度とも比較した。その結果 ,いずれもウイルス液の1000倍希釈までPCR陽性であったが,磁気ビーズでは出現したバンドは弱かった。しかし,抗体量を100μgにすると明瞭なバンドが得られた。
  • 抗BCVポリクローナルIgG (20μg)抗体を結合させたprotein A結合磁気ビーズを用いて500μlの10%下痢便懸濁液(11検体)からBCVの検出を試みたところ ,検出率は10/11であった。また,抽出キットの検出率も同一であった(表1,図1)。しかし ,ウイルス液を用いた場合には単に煮沸した方法(煮沸法)でも検出可能であったが,糞便では殆ど検出できなかった(1/11,表1,図1)。この原因として糞便中に大量に存在する夾雑物が反応を阻害している可能生が考えられた。
  • 抗牛A群BRVモノクローナル抗体(2μg)を結合させたprotein A結合磁気ビーズを用いて,10%牛下痢便懸濁液20検体からBRV遺伝子の検出を試みた。その結果 ,磁気ビーズと抽出キットの検出率はそれぞれ20/20であった(表2)。また,市販抗原検出キット(ロタレックスドライ)の検出率は19/20であった。

成果の活用面・留意点

  • 抗体結合磁気ビーズの使用により下痢便中に存在するウイルスを捕捉し,容易に糞便中の夾雑物が除去されたウイルスRNAを得ることができるために日常の検査に使用できると思われる。また ,特異的な抗体があれば他のウイルス検出にも応用可能である。

具体的データ

表1 下痢便からのBCV遺伝子の検出率

 

図1. 下痢便からの牛コロナウイルス遺伝子の検出

 

表2 下痢便からのBRV(遺伝子、抗原)の検出率

 

その他

  • 研究課題名:immuno‐PCRによる牛ウイルス性下痢症の診断技術の開発
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:今井邦俊, G.Jayawardane, 関 慶久, 西森知子