Streptococcus suis細胞壁結合蛋白質の表層提示に関与する遺伝子の同定

要約

S. suisのType strain NCTC10234株に細胞壁結合蛋白質の表層提示に必要な酵素sortaseと相同性のある蛋白質をコードする遺伝子を5つ(srtA, srtB, srtC, srtD, srtE)検出し ,このうちsrtAがsortase遺伝子であると同定した。srtA遺伝子破壊株で欠失した細胞壁蛋白のN末端アミノ酸配列を利用し,新規の細胞壁結合蛋白質遺伝子を3つ同定した。

  • キーワード:細胞壁結合蛋白質,Streptococcus suis,sortase,豚
  • 担当:動衛研・感染病研究部・病原細菌研究室
  • 連絡先:0298-38-7743
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

細胞壁結合蛋白質の表層提示に必要な酵素sortaseについては,これまでStaphylococcus aureusStreptococcus gordoniiでしか同定されていない。一方 ,ゲノムシークエンスの情報から,多くの菌種が複数の類似遺伝子を保有するも,互いに相同性が低いことが報告されている。そこで,Streptococcus suisの細胞壁結合蛋白質の表層提示に必要な遺伝子の同定を試みた。

成果の内容・特徴

  • S. suisのType strain NCTC10234株を用いて,(i) 類似遺伝子近傍の遺伝子構成の比較,(ii) 僅かな相同性をもとにしたPCR,(iii) ショットガンランダムシークエンス法の3つの手法で ,既報のsortaseと相同性のある蛋白質をコードする遺伝子を5つ(srtA, srtB, srtC, srtD, 及びsrtE)検出した (図1)。
  • srtA遺伝子はgyrA遺伝子と連鎖しており,同じ遺伝子構成は他のレンサ球菌S. pyogenes, S. pneumoniae, S. mutans, S. equi subsp. equiにも見られた。
  • ノックアウト用ベクターを利用して,srtA, srtBCD, 及びsrtEの遺伝子破壊株を作製し ,それらの細胞壁画分を2次元電気泳動で解析したところ,srtA遺伝子破壊株で,15以上のスポットの欠失が 確認され(図2) ,この形質は,クローニングしたsrtA遺伝子により完全に相補された。srtBCD及びsrtE遺伝子破壊株の2次元電気泳動像は ,親株と差異がなかった。
  • srtA遺伝子破壊株で欠失した細胞壁蛋白のN末端アミノ酸配列の決定を行い,それに対応すると思われる遺伝子の同定を行ったところ,既報のMRPとこれまで報告のない3つを含め ,いずれも細胞壁結合蛋白質に特徴的な構造を有していた (表1)ことから,srtAがsortase遺伝子であると同定した。
  • 新規細胞壁結合蛋白遺伝子の一つsntAの産物は,細胞壁に結合するための特徴的なモチーフとして,C末端にLPATGEを有するだけでなく,ほ乳動物細胞のインテグリン受容体を認識する共通のモチーフRGDを保有しており,S. suisの菌体表層に存在する新たな病原因子である可能性が考えられた。

成果の活用面・留意点

  • srtA遺伝子破壊株と親株との比較により,病原性に関与する可能性のある新規細胞壁結合蛋白質を同定する新たな手段が確立した。
  • srtA遺伝子近傍の遺伝子構成の共通性から,他のレンサ球菌においても同様に,gyrA遺伝子に連鎖する類似遺伝子がsortase遺伝子であると予想される。
  • 新たに同定した細胞壁結合蛋白質の共通配列は,これに何らかの抗原分子を連結し,融合蛋白として菌表層へ発現させる抗原提示装置の開発に利用できる。

具体的データ

図1 S.suis NCTC10234株に見られた5つのsrt遺伝子領域の構造

 

図2 S. suis細胞壁画分の二次元電気泳動像

 

表1 N末を決定した蛋白スポットに対応する遺伝子及び予想されるその産物

 

その他

  • 研究課題名:免疫誘導用弱毒グラム陽性菌ベクターの構築
  • 予算区分:交付金プロ(乳房炎)
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:大崎慎人,高松大輔,関崎 勉
  • 発表論文等:Osaki et al. (2002) J. Bacteriol. 184:971-982.