組換え豚回虫14kDa抗原の経鼻免疫による豚回虫感染防御

要約

マウスにおける組換え豚回虫14kDa抗原とコレラトキシンBサブユニットとの経鼻免疫によって豚回虫に対する感染防御免疫が確認されたことから,豚回虫感染に対する粘膜ワクチンの可能性が示唆された。

  • キーワード:寄生虫,豚回虫,感染防御,粘膜ワクチン
  • 担当:動衛研・感染病研究部・寄生虫病研究室
  • 連絡先:0298-38-7749
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

寄生虫感染症に対する予防対策の大半は化学療法剤に依存している。そのため,薬剤耐性を獲得した寄生虫の出現や畜産物への薬物残留が常に危惧されており,薬物に代わる新しい予防対策の確立が強く望まれている。また ,感染症対策の有効な手段であるワクチンについては,接種の手間・コストの軽減,さらに非侵襲性の粘膜型ワクチンの開発が求められている。本研究では,豚回虫(Ascaris suum)から粘膜免疫で有効なワクチン候補分子の同定を実施した。

成果の内容・特徴

  • 豚回虫14kDa(As14)はシグナル配列を有するアミノ酸148残基からなり,成熟蛋白質の推定分子量は約14kDaであった。GenBank解析からAs14はCaenorhabditis elegans及びフィラリア寄生性線虫由来の蛋白質と類似性が確認されたが ,他の生物種との間に類似性はなく線虫特異的蛋白質であることが示唆された。図1には大腸菌で作製した組換えAs14(rAs14)を示した。
  • As14の発現は免疫組織化学によって虫体の角皮下層組織,卵巣及び子宮上皮で確認された(図2)。また ,As14様抗原は人回虫及び犬回虫においても確認された。
  • コレラトキシンBサブユニット(CTB)と大腸菌で作製した組換えAs14(rAs14)で経鼻免疫したマウスにおいて感染幼虫を含む豚回虫成熟卵で攻撃試験を実施したところ ,免疫群ではCTBまたはrAs14単独で免疫した群と比較して感染後7日に肺組織内の有意な虫体数の減少が確認された(図3)。免疫群ではrAs14に対する有意な血清IgG及びIgE抗体ならびに粘膜IgA抗体の上昇が認められた(表1)。さらに免疫群のIgGサブクラスを調べたところ顕著なIgG1抗体の増加が確認された。

成果の活用面・留意点

  • As14は回虫類で同定されたはじめての感染防御抗原である。また,As14による防御免疫はCTBとの経鼻免疫で誘導できることが確認された。今回の成績は,回虫類による寄生虫感染に対する粘膜ワクチンの可能性を示唆するものである。

具体的データ

図1 組換えAs14抗原の作製

 

図2 豚回虫14kDa抗原の局在

 

図3 組換えAs14抗原を経鼻免役したマウスにおける豚回虫成熟卵の攻撃試験

 

表1 組換えAs14抗原を免役したマウスにおける特異的血清IgG及びにIgE抗体ならびに粘膜gA抗体

 

その他

  • 研究課題名:寄生虫表層蛋白質の分子性状の解析
  • 予算区分:パイオニア(寄生虫蛋白)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:辻 尚利,春日春江,磯部 尚
  • 発表論文等:
    1)Tsuji et al. (2001) Infect. Immun. 69:7285-7292.
    2)辻ら (2001) 第131回日本獣医学会学術集会講演要旨集 p60.
    3)辻ら 特許出願中 (特願2001-050208) 「豚回虫(Ascaris suum)感染幼虫の14kDa抗原,それをコードする核酸分子及びそれらの利用」