豚の離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の診断法の確立とわが国におけるPMWSの浸潤状況

要約

豚の離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の検査法を確立し,わが国におけるPMWSの疫学調査を行った。その結果,原因因子と考えられるブタサーコウイルス2型ならびにPMWS発症豚が高率にわが国の豚集団に存在することが明らかとなった。

  • キーワード:豚,離乳後多臓器性発育不良症候群,疫学調査
  • 担当:動衛研・疫学研究部・七戸研究施設・環境衛生研究室
  • 連絡先:0176-62-5115
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

離乳後多臓器性発育不良症候群(postweaning multisystemic wasting syndrome:PMWS)は,世界中で問題となっている豚の新興感染病である。PMWSにはブタサーコウイルス2型(PCV2)が関与していることが 証明されている。わが国では1999年に本病の存在とPCV2の分離が報告されたが ,診断法が十分に確立されておらず,また被害実態が調査されていない。そこで本研究では,PCV2に対する特異抗血清を作製して診断法を確立し,確立され た診断法を用いてわが国におけるPMWSの実態を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ノトバイオート豚にPCV2 Yamagata株を接種して抗PCV2豚血清を作製,さらに免疫染色条件を検討し,PCV2の免疫組織化学的検出法を確立した(図1)。
  • 臨床的に健康な肥育豚ならびに繁殖豚におけるPCV2の感染状況を,間接蛍光抗体法を用いた血清抗体検査により調査した。8県143農場の豚643頭について,PCV2抗体検査を実施した結果 ,農場別で96.6%,個体別で94.6%と高率であったことから,PCV2が,わが国に広く浸潤していることが示された(表1)。保存血清によるPCV2抗体調査では少なくとも1988年からすでにPCV2感染が認められた。また ,PMWS発生時の農場では,発生以前に比べて,PCV2抗体価がより早い月齢で上昇し,より高い抗体価を示した。
  • 「平成12年度診断予防技術向上対策事業(PMWS関連)」により,全国17府県と共同で,発育不良を呈した離乳豚におけるPCV2感染の有無を PCR法によって検査し ,PMWS病変の有無を病理組織学的ならびに免疫組織化学的に検査した。17府県48農場210頭についてPCR法によりPCV2核酸の検出を実施した結 果,PCV2は,県別で100%,農場別で97.9%,および個体別で80.4%に検出された。17府県52農場224頭についてPMWS病変ならびに免 疫組織化学的にPCV2を検出した結果 ,PMWS病変を保有し,かつ,病変内からPCV2が検出されたPMWS陽性豚は,県別で82.4%,農場別で53.8%,個体別で30.4%であった。 以上のことから,PCV2ならびにPMWSが ,わが国に広く浸潤していること,ならびにPCR法によりPCV2は検出されるがPMWS病変を持たない発育不良豚が高率に存在することが示された。ま た,PMWS発生農場においては ,発育不良豚の増加が認められない農場が認められた。

成果の活用面・留意点

野外での高率なPCV2の浸潤実態から,抗体検査やPCR法によるPCV2検出では,PMWSの診断は行うことはできない。従って,PMWSの診断は,離乳後発育不良豚において ,病理学的にPMWSの特徴病変を検出し,病変内においてPCV2を検出することによらねばならない。本研究により確立された免疫組織化学的PCV2検出法は,PMWSの診断に極めて有用である。

具体的データ

図1 PMWS特徴病変内に検出されたPCV2抗原(PMWS野外発症豚脾臓、免疫組織化学的染色法200倍)

 

表1 PCV2抗体検出によるPCV2浸潤調査

 

その他

  • 研究課題名:離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の実態解明
  • 予算区分:交付金(所内プロ)
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:川嶌健司,恒光 裕,勝田 賢,堀野理恵子,庄司智太郎,小野寺利幸,久保正法,池田秀利,村上洋介,加来義浩,吉井雅晃,播谷 亮,谷村信彦,木村久美子
  • 発表論文等:
    1)Kawashima et al. (2001) PMWS symposium-Idiology and Prevention p11-12.
    2)Kawashima et al. (2001) US-Japan Cooperative Program in Natural ResourcesPanel of Animal and Avian Health Meeting p5.
    3)川嶌ら (2000) 第130回日本獣医学会学術集会講演要旨集 p116.
    4)平成12年度診断予防技術向上対策事業 (PMWS関連) 成績報告書