乳牛公共牧場のダニの汚染と小型ピロプラズマ病の疫学解析

要約

全国85カ所の乳牛放牧場を対象に,アンケートを用いて実態調査を行った。対象放牧場の飼養環境や形態は極めて多様性があり,また疾病発生も地域差が認められた。ダニ汚染度の高い放牧場ほど小型ピロプラズマ病による被害が大きかった。

  • キーワード:牛,小型ピロプラズマ病,放牧場,ダニ,アンケート調査,疫学,寄生虫
  • 担当:動衛研・疫学研究部・予防疫学研究室
  • 連絡先:0298-38-7770
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

我が国の放牧草地では,小型ピロプラズマ病(以下小型ピロ)対策を柱とした牧野衛生対策が長年にわたり行われてきた。その結果,一部の草地はダニ汚染などが軽減され ,疾病被害も減少するなどの効果が認められている。しかし,全国的なレベルでの実態調査報告は極めて少ない。そこで放牧草地の地理的および,環境的要因,生産性や家畜衛生対策に関するアンケートを作成し ,全国の85の乳牛放牧場を対象に実態調査を行った。得られたデータから,各種の要因と小型ピロプラズマ病累積発生率(小型ピロ発生率),小型ピロプラズマ病治療率(小型ピロ治療率) ,増体量,受胎率などの疫学指標との関係を解析し,育成牛の生産性を減少させる要因について分析した。

成果の内容・特徴

  • 対象放牧草地の飼養形態に関する基礎的データおよび疫学指標は,それぞれ大きなばらつきがあり,放牧場の全国的な多様性が認められた (表1)。
  • 放牧場を全国6ブロック(北海道,東北、関東,北陸・東海,近畿・中国,四国・九州・沖縄)に分類し,それぞれのブロックにおける各疫学指標を取りまとめた (表2)。 北海道では小型ピロ発生率や治療率が低く ,重度のダニ汚染の放牧場の割合が小さい傾向が認められ,四国・九州・沖縄では小型ピロ発生率や治療率がやや高い傾向が認められた。
  • 各放牧場のダニの汚染度を重度,中度,軽度,なしの4段階に分け,4つの疫学指標(小型ピロ発生率,小型ピロ治療率,受胎率,増体量)との関係を解析した。その結果 ,ダニ汚染が重篤なほど小型ピロ発生率や治療率が有意に高かったが,受胎率や平均増体量とは関連性は認められなかった (図1)。

成果の活用面・留意点

  • 全国の放牧場を対象とした実態調査は数少なく,今回の飼養実態や疫学指標に関する数値を各ブロック毎に基礎データとして用いて,放牧場間の比較や評価に活用できる。
  • 我が国の北と南の放牧場では,小型ピロプラズマ病の発生やダニ汚染などの度合いが異なり,今後地域特性に応じた衛生対策の確立に本資料が活用できる。
  • 放牧場のダニの汚染度は小型ピロプラズマ病による損耗と極めて強い関連が認められ,放牧場毎のダニ汚染度に応じた外部寄生虫対策の確立が期待される。

具体的データ

表1 85放牧場の基礎的データと疫学指標

 

表2 地域ブロックにおける疫学指標

 

図1ダニの汚染度毎の各疫学指標(平均値)

 

その他

  • 研究課題名:牛の放牧衛生対策に関する経済評価法及び地理情報システムの開発
  • 予算区分:委託プロ(21世紀6系)
  • 研究期間:1998~2000年度
  • 研究担当者:山根逸郎,濱岡隆文,小岩井正博,筒井俊之,志村亀夫
  • 発表論文等:1)Yamane et al. (2001) Vet. Parasitol. 99:189-198.
                      2)山根ら (2000) 家畜衛生週報 2585:9-11, 2586:18-20, 2594:84-87.