フロルフェニコール耐性を指標としたSalmonella Typhimurium DT104の簡易スクリーニング法

要約

近年欧米において問題化しているSalmonella Typhimuriumファージ型DT104の簡易検出を目的としてDT104に特徴的なフロルフェニコール耐性を利用した検出法を開発したところ ,ファージ型別結果との相関性も高く,DT104の簡易スクリーニングに有用であると考えられた。

  • キーワード:サルモネラ,DT104,フロルフェニコール耐性,牛
  • 担当:動衛研・安全性研究部・ズーノーシス研究室
  • 連絡先:0298-38-7816
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

近年欧米において家畜衛生,公衆衛生の両面から注目されているSalmonella Typhimurium(ST)ファージ型 DT104については国内の家畜における浸潤状況調査が進められているが ,ファージ型別は煩雑であるため広範な調査は困難である。そこで本研究ではDT104の多くの菌株に特徴的なフロルフェニコール耐性を指標とした簡易スクリーニング法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • 1973~1998年分離ST162株につい て,Ampicillin(A),Chroramphenicol(C),Streptomycin(S),Sulfamethoxazole(Su),Tetracycline(T), 他9種類の抗菌薬に対する薬剤感受性を調べたところ ,DT104の多くの菌株に特徴的にみられるACSSuTを含む5剤耐性以上(ACSSuT+)を示した株が86株(53.1%)存在した。その86株に ついて国立感染症研究所にファージ型別を依頼した結果 ,86株中54株(62.8%)がDT104であることが明らかになった。
  • 簡易スクリーニング法として薬剤耐性型ACSSuTを示すDT104は染色体上にフロルフェニコール(Flo)耐性遺伝子を特徴的に保有すること を利用して,Floプライマーを用いたPCR検出法について検討した。その結果 ,上記のDT104 54株は全て増幅陽性であり,DT104への特異性の高さが明らかになった。DT104以外のACSSuT+株についても一部に増幅がみられたが,ST以 外の38血清型については全く増幅がみられなかったことから本法はDT104の一次スクリーニング法として有用と考えられた (表1)。
  • Flo耐性との関係を知るため, Floに対する最小発育阻止濃度(MIC)の分布を調べたところ,DT104株は全てMICが50mg/l以上であった (図1)。 またDT104ではないACSSuT+株では24/33株(72.7%)がMIC12.5mg/l以下であり ,Flo耐性株はFlo-PCR陽性株に100%一致した。そこでカットオフ値25mg/lと設定して1973~2001年の189症例分離STについて 調べたところ,Flo耐性率は牛由来株で81/160(50.6%),家禽で2/20(10%),豚で2/7,山羊1/1,ヤクシカ0/1であり ,さらに牛由来160株では 図2に示すようにFlo耐性株は全て1991年以降に分布しており ,上述のDT104の分離状況と一致した。

成果の活用面・留意点

  • 本スクリーニング法によってDT104の広範な浸潤状況が示された。国内におけるSTの食中毒は減少傾向にあるが,諸外国の現状を考慮するとひきつづき本菌に対する調査が必要である。

具体的データ

表1 F1oプライマーによるPCR増幅結果

 

図1 S..Typhimurium  ACSSuT +株87株のMIC分布

 

図2.牛由来S.TyphimuriumのFlo感受性試験結果

 

その他

  • 研究課題名:家畜及びその飼育環境由来サルモネラの分子遺伝学的検討
  • 予算区分:委託プロ(サルモネラ)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:鮫島俊哉,秋庭正人,吉井紀代,中澤宗生
  • 発表論文等:1)Sameshima et al. (2000) Jpn.J.Infect.Dis. 53:15-16.
                      2)鮫島 (2000) 動物用抗菌剤研究会報 22:16-20.
                      3)鮫島ら (2001) 第131回日本獣医学会学術集会講演要旨集 p101.