in situ hybridizationによるウマヘルペスウイルス1型遺伝子検出法の確立

要約

馬鼻肺炎の病因となるウマヘルペスウイルス1型(EHV1)遺伝子由来の塩基配列をin situ hybridization(ISH)で検出する手法を確立するために、各種の固定法および核酸露出法がシグナル強度に及ぼす影響を検討した。その結果、ホルムアルデヒド固定とProteinase-K処理がパラフィン包埋材料のISHに最も適していることが明らかとなった。

  • キーワード:馬鼻肺炎、ウマヘルペスウイルス1、in situ hybridization
  • 担当:動衛研・感染病研究部・感染病理研究室
  • 連絡先:電話029-838-7837
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

EHV1は馬鼻肺炎を起こし、届出伝染病に指定されている。馬鼻肺炎の発病機構解明にはウイルス遺伝子由来の塩基配列を高感度かつ特異的に検出できるISH法が有効である。従来の報告ではゲノムとmRNAのシグナルが区別されておらず、固定法によるシグナル強度の差は不明であった。本研究ではISHによるEHV1遺伝子検出法を確立するために、EHV1を実験的に感染させた動物の臓器を用い、各種固定法および核酸露出法がEHV遺伝子のシグナル強度に及ぼす影響について検討した。

成果の内容・特徴

EHV1に感染した馬胎子の肝臓を4種類の固定液(10%リン酸緩衝ホルマリン、4%パラホルムアルデヒド、ブアン、メタカルン)で固定(2時間、1日 間、7日間)後パラフィンに包埋した。組織切片をProteinase-Kで消化後、EHV1ゲノムのglycoprotein B(gB)遺伝子の塩基配列と結合するdigoxigenin(DIG)標識二本鎖DNAプローブ、アルカリフォスファターゼ標識抗DIG抗体および酵素 基質を用いて発色反応を起こしシグナルを顕微鏡で観察した。

  • 蛋白質架橋剤である10%リン酸緩衝ホルマリンおよび4%パラホルムアルデヒドで固定した場合、切片のProteinase-K処理によってEHV1-gB遺伝子の強いシグナルが得られる。長時間固定した場合は長いProteinase-K処理が必要であるが、短時間固定した場合と同様の強いシグナルを得ることができる。ヘマトキシリン・エオジン染色等の通常の組織標本(図1)ではウイルス感染を示す核内封入体は病巣内に少数のみ認められる。しかしISH標本(図2)ではより多数のEHV1感染細胞が明瞭に検出される。
  • 組織切片をあらかじめRNA分解酵素で消化後ISHを行うと主に細胞質内のシグナルが消失する(図3)。一方、DNA分解酵素で消化後にISHを行うと主に核内のシグナルが消失する(図4)。これは本法がEHV1-gB領域由来のDNAおよびmRNAの両者を検出していることを示している。
  • 迅速固定剤であるブアン固定では、2時間固定ではシグナルが検出されるが、1日間以上固定するとシグナルが著しく減少する。
  • 脱水性凝固剤であるメタカルン固定では、固定時間に関わらずシグナルが検出され、Proteinase-K処理は不要である。しかし、10%リン酸緩衝ホルマリンあるいは4%パラホルムアルデヒド固定した場合よりシグナルは弱くなる傾向がみられる。

成果の活用面・留意点

  • ホルムアルデヒド系固定液(10%リン酸緩衝ホルマリン、4%パラホルムアルデヒド)はEHV1-gB遺伝子を検出するISH法に最も適している。任意の遺伝子由来の塩基配列からプローブを作製すれば特定の遺伝子の発現と感染増殖機構との関連を検査できる。
  • 免疫組織化学で検出されるウイルス抗原自体は、必ずしも当該細胞でその時点でウイルスが増殖していることを意味しない。ISHでウイルス遺伝子発現を検出することによってウイルスが増殖している標的細胞を直接証明できる。

具体的データ

図1~4

その他

  • 研究課題名:馬鼻肺炎における分子病理学的研究手法の確立
  • 予算区分:交付金(共同研究)
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:谷村信彦、播谷亮、木村久美子、西森知子、今井邦俊、
                      片山芳也1、大出浩隆1、松村富夫1、安斉了1(1JRA競走馬総合研究所栃木支所)