日本で分離された口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株の動物に対する病原性

要約

口蹄疫ウイルス日本分離株(O/JPN/2000)を種々の偶蹄類動物に接種し、その病原性や水平伝播あるいは接触感染の有無について検討した。本株は豚に典型的な症状を示し、接触感染も起こしたが、反芻動物に対しては病原性が低く、伝播も起こりにくいことが明らかとなった。

  • キーワード:口蹄疫ウイルス、病原性、伝播様式
  • 担当:動衛研・海外病研究部・診断研究室、予防研究室
  • 連絡先:電話042-321-1441
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

2000年に日本で分離された口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株は、遺伝子解析によってアジア地域で広く流行しているPanAsia strainに属することが明らかにされた。本ウイルス株は、東アジア地域で同時期に分離された株(台湾株、韓国株等)、さらには2001年英国で分離された株と血清学的・遺伝学的に近縁であるが、その感受性動物に対する病原性や伝播様式は異なっている。そこで、口蹄疫の防除法の確立ならびに疫学的解析に役立てることを目的として動物感染実験を行い、O/JPN/2000株の病原性を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • ホルスタイン牛(乳牛)、黒毛和牛(和牛)、緬羊および山羊各1頭の舌皮内にO/JPN/2000株106.0-8.0TCID50を接種し、接種後1日目にそれぞれ同種動物1頭を同居させた。また同様に豚1頭の蹄球部に同株を接種し、豚2頭を同居させた。ウイルスを接種した和牛に豚2頭を同居させる実験も実施した。2~3週間にわたって接種動物・同居動物の臨床観察を行うとともに、ウイルス血症および排泄状況をRT-PCR、培養細胞を用いたウイルス分離で、抗体価の推移を抗体検出ELISA、中和試験で調べた。
  • 乳牛の場合、接種牛ならびに同居牛ともに臨床症状は認められなかった。接種牛では血漿中にウイルスが検出され、抗体陽転も確認されたが、ウイルスは排泄されないことが判明した。同居牛の検査結果はすべて陰性であった(表1)。
  • 和牛の実験では同居感染が成立し、接種牛・同居牛ともに口腔内や鼻腔内に鼻欄・潰瘍が認められた(図1)。しかしながら、四肢蹄部には水疱の形成は見られなかった。接種牛・同居牛いずれの場合にもウイルス血症、ウイルスの排泄が認められ、発症時期にほぼ一致して抗体陽転が確認された。
  • 豚の場合、和牛同様に同居感染が成立し、接種豚・同居豚ともに典型的な口蹄疫の症状を示すことが明らかとなった(図2)。すべての豚でウイルス血症、ウイルスの排泄が認められ、発症後2~3日目に抗体陽転が確認された。
  • 緬羊および山羊の場合、接種動物ならびに同居動物ともに臨床症状は認められなかった。接種動物にはウイルス血症、ウイルス排泄ともに認められず、抗体陽転が確認されたのみであった。同居緬・山羊の検査結果はすべて陰性であった。
  • ウイルス接種和牛から豚への同居感染は認められなかった。牛では前述のとおり、ウイルス血症、ウイルスの排泄および抗体陽転が確認されたが、同居豚2頭はすべての検査で陰性を示した。
  • 以上のことから、O/JPN/2000株は反芻動物、とくに乳牛、緬・山羊に対しては病原性が低く、ウイルス伝播も起こりにくいことが判明した。

成果の活用面・留意点

このような非定型的な口蹄疫の臨床データは、動物種による侵入・蔓延防止策の重要性を指摘するものであり、今後の口蹄疫対策の策定に極めて有用となる。

具体的データ

表1. 口蹄疫ウイルスO/JPN/2000 株を用いた感染実験の結果

 

図1. 黒毛和牛の感染試験。口腔内に潰瘍が形成される。

 

図2. 豚の感染試験。蹄部に水疱が形成され、やがて破れる。

その他

  • 研究課題名:口蹄疫ウイルスO/JPN/2000を用いた感染試験による性状解明
  • 予算区分:交付金プロ(口蹄疫)
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:山川 睦、菅野 徹、加来義浩、森岡一樹、吉田和生、坂本研一
  • 発表論文等:1)Sakamoto and Yoshida (2002) Rev. sci. tech. Off. int. Epiz., 21(3) p459-463.