全国の牛放牧場の衛生実態調査(2000年)

要約

2000年に全国701の放牧場から放牧環境や生産性、家畜衛生に関するデータを収集し、取りまとめた。そのデータを1970年の調査結果と比較したところ、放牧場の衛生状態の改善が認められた。

  • キーワード:牛、放牧場、放牧病、疫学調査、小型ピロプラズマ病
  • 担当:動衛研・疫学研究部・予防疫学研究室
  • 連絡先:電話029-838-7770
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

わが国の放牧場は放牧環境や飼養管理に多様性があるが、草地と放牧病に関する全国的な実態調査は1970年より行われておらず、近年の放牧場の実態情報は十分ではない。そこで2000年に全国の家畜保健衛生所を通じて、放牧利用面積10ha以上、放牧頭数30頭以上の放牧場を対象に調査を依頼した。それらのデータを取りまとめた上、さらに1970年に行われた放牧場実態調査の結果と比較検討を行った。

成果の内容・特徴

放牧場数は1,736→701と著しく減少した。放牧頭数は、ホルスタイン種(81,844→91,509)褐毛和種(25,968→27,349)でやや増加したが、黒毛和種(51,371→36,044)と日本短角種(30,546→8587)は減少した。
年間発病・事故率は、放牧中の一年間の発病・事故頭数/放牧頭数でみると、乳用種、肉用種共に半数程度に減少した(図1)。放牧中の一年間の死亡・廃用頭数/放牧頭数でみた年間死亡・廃用率は、乳用種で1/4に、肉用種でも1/2以下に減少した(図2)。
ダニ寄生のある放牧場の割合はやや減少に止まっているが、ダニ寄生の程度は2000年の調査では多くの放牧場では軽度であった。ワラビの認められる放牧場の割合は約半分となった(図3)。
放牧場における疾病の順位について比較した(表1)。乳用種、肉用種ともに小型ピロプラズマ病の順位が低下し、肺炎・気管支炎や趾間腐爛が顕在化した。小型ピロプラズマ病の順位の低下は、過去30年間の牧野環境や放牧衛生の改良と合わせて、平成以降に用いられている効果の高い殺ダニ剤の使用によるものと考えられる

成果の活用面・留意点

2003年度中に今回の調査の詳細なデータをまとめた報告書を作成し、対象となった全国の放牧場、家畜保健衛生所、各種研究所、大学等に送付する予定であ る。この報告書を活用することにより、放牧場担当者が放牧場の各種実態について、それぞれの地域における平均値などと比較しながら、目標を設定して生産性 の向上および衛生対策の強化に取り組むことが可能となる。

具体的データ

図1 年間発病・事故率の比較 図2 年間死亡・廃用率の比較

 

図3 ダニ寄生とワラビの認められる放牧場の割合 表1 疾病の順位の比較

その他

  • 研究課題名:牛の放牧環境及び衛生対策に関する全国調査
  • 予算区分:委託プロ(21世紀6系)
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:山根逸郎、筒井俊之、志村亀夫