直接蛍光法による牛血清レチノールの測定

要約

直接蛍光法による牛血清レチノール濃度は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法による測定値と高い相関を示した。また再現性も良好であった。直接蛍光法は簡易で経済性にも優れ、多検体の血清レチノール測定に有用な方法であることが確認された。

背景・ねらい

黒毛和種肥育牛は肉質改善のためビタミンA無添加飼料を与えられており、欠乏症発症を防ぐための血中レチノール測定が行わ れている。血清レチノール測定にはHPLC法が用いられているが、溶媒抽出、濃縮などの前処理を必要とする。Futterman(1975)らは、血漿中 でレチノール結合蛋白質(RBP)と結合しているレチノールが、有機溶媒中に抽出されたレチノールよりも高い蛍光強度を示すことを利用し、希釈血清の蛍光 強度を測定することによりヒト血清レチノールを測定する直接蛍光法を報告している。我々は牛血清レチノール測定への直接蛍光法の応用について検討した。特 に、牛血清は人に比べてβ-カロテン濃度が高く、また野外採血材料では溶血血清が多いが、β-カロテンやヘモグロビンの吸収極大波長はレチノールの蛍光極 大に近いため、これらの物質が測定に与える影響について定量的に検討した。

成果の内容・特徴

  • 直接蛍光法:血清を1 mM塩化ナトリウムで20倍希釈し、蛍光分光光度計(日本分光FP777)を用いて励起波長330 nm、蛍光波長463 nmで測定した。得られた蛍光値は、HPLC法によって測定したレチノール濃度既知血清の蛍光値から作成した検量線を用いてレチノール濃度に変換した。
  • 直接蛍光法によるレチノール濃度は、HPLC法によるレチノール濃度(r = 0.955, n = 184)およびRBP濃度(r = 0.851、n = 88)と高い相関を示した(図1、2)。また再現性も良好であった(日間相対標準偏差 = 4.9%)。
  • ヘモグロビンが測定値に与える影響について検討したところ、今回測定した試料では溶血の影響は認められず、実験的に血清へのヘモグロビン添加をした場合でも、高度溶血に相当する1 mg/mlまで影響はなかった(図3)。
  • β-カロテンが測定値に与える影響について検討したところ、β-カロテン400μg/ml 以下では、HPLC法に比べて有意な差は見られなかったが、400 - 600μg/ml、600μg/ml以上の場合、それぞれ11%、26% 有意に低い値となった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 直接蛍光法は蛍光分光光度計を必要とするが、HPLCに比べると比較的安価である。また抽出、濃縮操作もいらないため、検体あたりの費用はほとんどかからない。また、より現場に近い家畜保健衛生所や共済組合診療所での利用に適している。
  • 直接蛍光法によるレチノール測定は、牛においても十分な正確性、再現性があり、多検体の血清ビタミンAを迅速に測定する場合には大変有用な方法となる。
  • 血中βカロテン濃度が高い放牧牛では有意な負誤差を与える可能性があり、その適用には注意を要する。

具体的データ

図1 HPLC法と直接蛍光法との相関

 

図2 直接蛍光法によるレチノール値とRBP値との相関

 

図3 直接蛍光法に対するヘモグロビンの影響

 

表1 直接蛍光法に対するβ-カロテンの影響

 

その他

  • 研究課題名:牛の脂質代謝亢進に伴う肝障害発生機構の解明
  • 課題ID:13-05-01-01-04-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:宮本 亨、太田洋一(新潟県)、森脇俊輔(島根県)、高橋雄治、大橋 傳