牛白血病ウイルス及び牛免疫不全様ウイルスの生体内における感染様式

要約

牛白血病ウイルス(BLV)および牛免疫不全様ウイルス(BIV)は、生体内で幅広い白血球細胞感染域を持っていた。ウイルスmRNAの発現はBIVでは各リンパ球分画に認められたが、BLVはBリンパ球のみで認められた。

背景・ねらい

レトロウイルス科に属する牛白血病ウイルス(BLV)はヒトT細胞白血病ウイルスと同じグループに分類される。BLVは感染後、長い潜伏期を経てB細胞性 の白血病/リンパ腫を引き起こす。同じレトロウイルス科に属する牛免疫不全様ウイルス(BIV)はヒト免疫不全ウイルスと同じグループに分類され、その病 原性については不明である。本研究ではBLVの腫瘍化機構およびBIVの病原性解明を目的として、末梢血リンパ系細胞を詳細に分画し、両ウイルスのin vivo における標的細胞および細胞内の発現状況を検討した。

成果の内容・特徴

  • BLVおよびBIV感染牛の末梢血から比重法を用いて単核細胞(PBMC)を分離し、各リンパ球分画に対するモノクローナル 抗体と磁気ビーズ法を用いて、各細胞を分画し(分画率は95%以上)、それらよりDNAを抽出しPCRを行ったところ、各リンパ球サブセットで両ウイルス の遺伝子を確認した(図1aおよび2a)。
  • 分画した細胞よりRNAを抽出しRT-PCRを行ったところ、BLVではB-B2+細胞のみが陽性を示し、サザンブロットにより、その特異性が確認された(図1b、1c)。BIVでは全ての細胞分画において陽性反応が検出された(図2b)。
  • BLV感染牛リンパ球分画ごとに、リアルタイムPCRを用いて細胞に組込まれているBLV遺伝子を定量したところ、Bリンパ 球(B-B2+および未熟型からIgM+)はTリンパ球(ヘルパーT細胞に発現しているCD4+および細胞傷害性細胞に発現しているCD8+)に比較し て、高率にBLV遺伝を保有していることが明らかとなった(図3)。
  • BLV感染牛末梢血リンパ球(PBL)、CD3+Tリンパ球、B-B2+およびIgM+Bリンパ球を用いて多核巨細胞形成に よるウイルス感染価測定を行ったところ、Bリンパ球のみが感染性ウイルスを産生した。また、多核巨細胞形成能はB-B2+リンパ球よりもIgM+リンパ球 の方が高かった(図4)。
  • 以上より、BLVとBIVの生体内における感染様式の違いが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • 本研究により得られた基礎知見は、BLVがB細胞を選択的に腫瘍化する機構の解明に活用できる。

具体的データ

図1 抹消血単核球分画jからのBLVプロウィルスおよびmRNAの検出

 

図2 末梢血単核球分画からのBIVプロウイルスおよびmRNAの検出

 

図3 リンパ球分画における組込まれているBLVゲノム量の比較

 

図4 末梢血リンパ球

 

説明

 

その他

  • 研究課題名:牛レトロウイルス遺伝子のin vivo における発現状況の解明
  • 課題ID:13-02-01-*-18-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:?東来 (STA、ハルビン獣医研)、村上賢二、諸岡晃(STA)、金紅 (ハルビン獣医研)、猪島康雄、小西美佐子、泉對博
  • 発表論文等:Wu et al. (2003) Virus Res. 97:81-87.