発育不良子豚およびと畜場出荷豚由来Mycoplasma hyorhinisのマクロライド系薬剤感受性と耐性機構の解明

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要約

発育不良子豚およびと畜場出荷豚から分離されたM. hyorhinis株のマクロライド系薬剤耐性株の割合はそれぞれ約40 %および4 %であった。全ての野外耐性株は23S rRNAのA2059G変異が確認され、この変異が耐性発現に関与していることを明らかにした。

  • キーワード:ブタ、Mycoplasma hyorhinis、マクロライド、耐性菌
  • 担当:動物衛生研・疫学研究部・臨床疫学研究室
  • 連絡先:電話029-838-7798、電子メールでの問い合わせはこちらから。
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

マイコプラズマ感染症対策にはマクロライド系薬剤(ML)が第1選択剤として使用されている。1991~1994年に国内の発育不良豚から分離されたMycoplasma hyorhinisの約10%はMLの耐性株であったと報告されている。その後、国内における上記豚由来マイコプラズマの薬剤感受性試験報告はない。そこで、飼料添加物あるいは治療薬として使用されるマクロライド系薬剤に暴露される機会の多い発育不良子豚(2002~2004年採材)および休薬後に出荷される豚(2004年採材)から分離されるM. hyorhinisの薬剤感受性を調査し、感受性の変化を解析する。さらに、マクロライド系薬剤耐性株について、耐性機構を解明する。

成果の内容・特徴

  • MLおよびリンコマイシン(LCM)に同時に耐性を示したM. hyorhinis株数は子豚由来71株中28株(39.4 %)、出荷豚由来80株中3株(3.8 %)であった(表1)。どちらか一方のみに耐性を示す株はなかった。なお、耐性株検出頻度に地域差はなかった。
  • タイロシン(TS)で誘導したTS耐性BTS7T株(MICTS100μg/ml)はLCMに対しても高度耐性(MICLCM >100μg /ml)を示したが、LCMで誘導したLCM耐性株(MICLCM 50μg /ml)はTSに対しては中等度耐性(MICTS 6.25μg /ml)であった。
    一方、LCMで誘導したLCM耐性株を更にTSで誘導しMICTS 100μg /mlとするためには、TSのみで誘導してTS高度耐性株を作出するのと比較し3倍の継代数を要した(図1)。
  • TSで誘導したTS高度耐性株の変異部位は23S rRNAのドメイン V(dV)の部分に1カ所、A2059Gが認められた。ML耐性野外株においても全て同じ変異が確認された。LCMで誘導したLCM耐性株の変異部位は、dVの他にdIIにも認められ(計4カ所)、LCM耐性株をTSでさらに誘導したTS高度耐性BTS7株にはLCM耐性株の変異点に加え、A2062Gが認められた(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 今回得られた成績はわが国において発育不良子豚から分離されるM. hyorhinisが高い割合でML耐性を示すことを示唆している。子豚のM. hyorhinis感染症対策にMLを用いる場合にはMLに対する感受性を確認する必要がある。
  • マクロライド耐性M. hyorhinis野外株のポイントミュテーション(PM)の位置が確認されたことから、変異位置を含むM. hyorhinis菌種特異PCRとPM検出装置を使うことにより肺炎病巣部中の耐性株の直接検出が迅速に行える可能性がある。

具体的データ

表1.ML耐性とMycoplasma hyorhinis31株の各種MLとリンコマイシンの感受性 図1.TSおよびLCMによるM. hyorhinis株BTS7T株の耐性値上昇試験

 

図2.TSおよびLCMで耐性誘導したBTS7T株の23SrRNAにおけるポイントミューテーションとその部位

その他

  • 研究課題名:発育不良豚およびと畜場出荷豚由来Mycoplasma hyorhinisのマクロライド系薬剤感受性と耐性機構の解明
  • 課題ID:13-01-01-*-21-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2004年度
  • 研究担当者:小林秀樹、秦 英司、江口正志
  • 発表論文等:1) 秦ら(2004) 日本豚病研究会報 43:12-17.
                      2) 小林ら(2004) 日本豚病研究会報 44:23-28.