日本に新たに侵入したアルボウイルス"Shamonda virus(シャモンダウイルス)"

要約

血清・抗原学的及び遺伝学的解析により、2002年に南九州のヌカカあるいは牛から分離したウイルスの中から、1960年代にナイジェリアで見つかったアルボウイルス“Shamonda virus(シャモンダウイルス)”を我が国ではじめて確認した。

背景・ねらい

九州・沖縄地域では、アルボウイルスによるウシの流早死産及び先天性異常(いわゆる異常産)が多発している。アルボウイルスは、蚊、ヌカカ、ダニ等の吸血性節足動物が媒介するウイルスの総称で、分類学上少なくとも6科10属500種にのぼるため、原因ウイルスを特定するためには多種多様な血清・抗原学的および遺伝学的解析を行わなければならない。継続的にアルボウイルスの流行や侵入状況を解析してきた中で、これまで国内では未確認のアルボウイルスの存在が示唆され、詳細な解析及び同定を実施した。

成果の内容・特徴

  • 2002年に鹿児島あるいは宮崎でヌカカやウシから分離した6株のウイルスは、オルソブニヤウイルス属シンブ血清群のウイルスと広く反応する、アカバネウイルスのヌクレオカプシドに対するモノクローナル抗体と反応したことから、シンブ血清群に属することがわかった。しかし、これまで日本で分離されたシンブ血清群に属するアカバネ、アイノ、ピートンウイルスのウイルス外被タンパクに対するモノクローナル抗体と反応しなかったことから、別の新しいウイルスと推測された。
  • ヌクレオカプシドをコードするS RNAセグメントの塩基配列を解析した結果、分離株6株は遺伝学的にほぼ同じ性状を持っていた。データベースを用いた相同性解析と、それを基にした系統樹解析により、分離株はシンブ血清群のShamonda virus (シャモンダウイルス;SHAV)と最も遺伝学的に近いことがわかった(図)。
  • 鹿児島でヌカカから分離したKSB-6/C/02株はSHAVと交差反応を示し(表)、さらに宮崎でウシから分離した5株もKSB-6/C/02株とSHAVの抗体によって中和された。
  • 以上のことから、分離株6株はSHAVであると同定した。SHAVは、1960年代にナイジェリアでヌカカ及びウシから分離され、今日まで30年以上世界中で分離、流行の報告がなかったことから、本研究によりアフリカからアジアに及ぶ広大な分布域を持つことが推察され、時間的、空間的に離れている場合でも、アルボウイルスの流行が起こる可能性が示唆された。

成果の活用面・留意点

  • 新たにアルボウイルスが確認されたことで、これまで継続してきたアルボウイルスの調査の有効性が明らかになり、SHAVも監視対象に加えることにより、アルボウイルスによる異常産等の原因解明や流行予察の向上が期待できる。
  • 日本でSHAVを分離した地域でウシの異常産が報告されているが、SHAVの感染との直接的な関連性は見いだされておらず、防除システムを構築するためにもウシでの病原性を検討する必要がある。

具体的データ

図.S RNA セグメント上のヌ クレオカプシド遺伝子に基づ く分離株とシンブ血清群ウイ ルスとの系統関係

 

表.分離ウイルスとシンブ血清群ウイルスとの交差中和試験

その他

  • 研究課題名:アルボウイルスの流行予測と防除システムの構築
  • 課題ID:13-02-03-03-18-04
  • 予算区分:科振調/新興・再興感染症
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:梁瀬 徹、加藤友子、山川 睦、津田知幸、前田浩一、入田重幸
  • 発表論文等:Yanase et al. (2005) Arch. Virol. 150:361-369.