牛アポリポ蛋白質EのELISAの開発と血中動態および性状の解析

要約

牛血液中のアポEを同定しELISAによる定量法を確立した。さらに絶食や泌乳により血中アポE濃度が増加すること、ヒトやラット等と異なり、ゲルろ過でHDL領域に溶出されるアポEはHDLの構成成分ではなく、遊離型であることが明らかになった。

背景・ねらい

アポリポ蛋白質(アポ蛋白)は血中の脂質輸送に不可欠であり、その血中濃度は生体の生理的、病的状態を反映している。特に脂質代謝が亢進する乳牛の周産期には大きな変動を示し、周産期疾病の診断や予防に有効であることが明らかとなっている。ヒトにおいてアポリポ蛋白質E(アポE)は各臓器・細胞のレセプターに対するリガンドとして機能し、脂質代謝に重要な役割を持ち、特に高脂血症の診断指標として利用されている。また、超低密度リポ蛋白質やカイロミクロン、高密度リポ蛋白質(HDL)に分布していることが知られている。しかし、牛においてはほとんど情報がなく、本研究は牛アポEの動態および性状を解析することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 牛の血液中に存在するアポEをN末アミノ酸配列により同定した。
  • 牛アポEに対する抗血清を作出し、ビオチンーアビジン系のサンドイッチELISAによる定量法を確立した。
  • 3日間の絶食により血中アポE濃度が有意に増加し(p<0.05)、再給餌3日後には絶食前の濃度に回復した(図1)。
  • 乳牛の血中アポE濃度は乾乳期に比較すると泌乳期は有意に増加した(P<0.05)。泌乳初期、中期、後期間では差はなかった(図2)。
  • 泌乳牛では乾乳牛に比べ、ゲルろ過でHDL領域に位置するアポEが増加した(図3)。アガロースゲル電気泳動の結果、ラットではHDLに相当するα位にアポEが大量に検出されるが、牛では検出されなかった(図4)。泌乳牛HDL領域から分離したアポE含有粒子は、コレステロールをほとんど含まなかったことから、泌乳牛血漿にはラットと異なり、リポ蛋白質に結合していない遊離のアポEが存在することが判明した。
  • 牛初代培養肝細胞が分泌するリポ蛋白質をゲルろ過あるいは超遠心で分画しアポEの分布を調べたところ、泌乳牛血漿と同様であった。さらに分離したアポE含有粒子にはアポE以外のアポ蛋白がほとんど含まれていなかった。これらの結果より、牛アポEは肝細胞から他のアポ蛋白や脂質を含まない形で分泌されることが示唆された。これはリポ蛋白質として他のアポ蛋白や脂質と一緒に分泌されるヒトやラットと異なる牛アポEの特質であるといえる。

成果の活用面・留意点

  • 牛アポEの特質が明らかとなり、定量法が確立された。本成果は脂質代謝異常の発生機序解明や、周産期疾病診断法への応用への可能性を示唆した。

具体的データ

図1.絶食牛の血中アポE濃度推移。 図2.泌乳期別牛血中アポE濃度。

 

図3.乳牛アポEのリポ蛋白質内分布:ゲルろ過 図4.アガロースゲル電気泳動。

その他

  • 研究課題名:牛アポリポ蛋白質Eの性状解析による疾病診断法への応用
  • 課題ID:13-05-01-*-07-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:高橋雄治、宮本 亨、大橋 傳
  • 発表論文等:1) Takahashi et al. (2003) J. Vet. Med. Sci. 65:199-205.
                      2) Takahashi et al. (2003) Comp. Biol. Physiol. Part B 136:903-910.