ウロコルチン遺伝子の発現を指標としたヨーネ病の診断法

要約

ヨーネ菌抗原を牛の血液に添加して培養後にウロコルチンの遺伝子発現を測定することで感染を判定する診断法で、ELISA法や細菌培養法などの公定法で陰性を示す不顕性感染牛も診断可能な新技術である。

  • キーワード:ウシ、ヨーネ病、診断、神経ペプチド、PCR
  • 担当:動物衛生研・企画調整部・ヨーネ病・炎症性腸疾患研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7781、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

牛のヨーネ病は慢性の下痢を特徴とする家畜法定伝染病であるが、近年、発生増加による畜産業に対する経済的被害が多大である。また 感染牛の牛乳には本菌が排出され、子牛への感染源になるとともに、食品衛生上の問題にもなっている。実際、ヨーネ菌が人のクローン病患者の病変部や末梢血 液から検出・分離されるなどの報告がなされているためにクローン病との関連を疑う報告も多い。我が国では従来から、本病を撲滅対象疾病に指定し対策を講じ てきたが、病気のステージにより免疫学的応答性が複雑多様であることから、単一の診断法での清浄化が困難である。そのため、新たな原理による診断方法の開 発が求められている。

成果の内容・特徴

  • ヨーネ病の感染初期には菌を殺す作用のある細胞性免疫機能が高まるが、一般に中期以降低下するため、免疫抑制に関連 する神経ペプチドの遺伝子発現を調べるため、牛のマクロファージを大腸菌由来リポポリサッカライド(LPS)で刺激し、ウロコルチンのcDNAのクローニ ングを実施した(図1)。これはNCBI遺伝子データベースに登録されている(NM_001032301)。
  • 得られた遺伝子配列を元に、ウロコルチン遺伝子発現を測定するリアルタイムRT-PCR用のプライマーをデザインして特異性を確認している。(図2)。
  • 不顕性感染実験牛と非感染牛の血液をとり、ヨーネ菌抗原を加えた場合と加えない場合のウロコルチンmRNAの発現レベルを経時的に測定すると、感染牛では菌抗原刺激時に特異的に抑制される現象が見られる(図3)が、健康牛では有意差は見られない(図4)。ウロコルチンmRNAの測定値は発現が一定しているGAPDHを内部標準とした補正値を使用する。
  • 細胞刺激や活性化を起こすLPSで血液細胞を刺激した場合のウロコルチンmRNAの発現を測定すると、感染牛では添加・無添加での有意差はなく、健康牛ではいずれも増加傾向を示し感染牛と区別し得ない。
  • ヨーネ菌抗原無添加培養血液でのUCN mRNAの測定値をA、同抗原添加培養血液での測定値をBとして、(A-B)/A=Cという数式を適用すると、ヨーネ菌感染牛ではC値が0.3以上となり、感染・非感染の判定が可能である。

成果の活用面・留意点

  • ヨーネ病の発生のある牧場において、公定法を補強する検査法として感染を疑う牛のスクリーニングに利用できる。本診断結果を農場の汚染状況の把握に活用することで清浄化が進む。
  • ヨーネ病には様々なステージがあるため、単一の技術での診断では感染動物の判定が十分ではないため、抗体検出や糞便中の菌の分離培養などと組み合わせて検討すると摘発効果が高い。

具体的データ

図1 牛マクロファージ由来ウロコルチン遺伝子(cDNA)の配列

 

図2 検出用プライマー

 

図3 感染牛の抹消血液におけるウロコルチンmRNAの発現パターン

 

図4 健康牛の末梢血液ウロコルチンmRNAの発現パターン

 

説明

 

その他

  • 研究課題名:家畜とヒトの炎症性腸疾患の発生機序と関連性の解明「ウシヨーネ病とヒトの炎症性腸疾患における粘膜環境維持機構の解明」
  • 課題ID:13-02-01-*-41-05
  • 予算区分:競争的研究資金(新技術創出)
  • 研究期間:2001∼2005年度
  • 研究担当者:百溪英一、王 宏宇
  • 発表論文等:
    1) Wang and Momotani (2004). Bos taurus UCN mRNA for urocortin.
    2) 百溪、王 (2005)、「ヨーネ病診断用プライマーおよびウロコルチン遺伝子の発現定量法によるヨーネ病の診断法」特許出願番号 特願2005-291868.
法人番号 7050005005207