増感in situ hybridization法によるヨーネ菌特異的遺伝子IS900検出法

要約

ヨーネ病に罹患した牛の腸間膜リンパ節にみられる肉芽腫病変内において、タイラマイド増感in situ hybridization法は、ヨーネ菌が特異的に保有する挿入遺伝子IS900を高感度に検出する。

  • キーワード:家畜、ウシ、in situ hybridization、ヨーネ菌、IS900
  • 担当:動物衛生研・九州支所・臨床病理研究室
  • 連絡先:電話099-268-2078、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

日本で摘発・淘汰されるヨーネ病罹患牛の発生数は増加の傾向にあるが、その多くは臨床的にELISA法による抗体検査のみが陽性で 下痢や削痩をともなわない無症状無排菌牛である。これらの牛の空回腸や腸間膜リンパ節にみられる病変は、発症排菌牛における感受性型病変とは対照的な抵抗 性型病変である。抵抗性型病変では、その多くが従来の抗酸菌染色や免疫組織化学的染色によりマクロファージ系細胞内に菌体を検出できず、病変形成とヨーネ 菌感染との関連を証明することが困難なことを特徴としている。そこで本研究では、ヨーネ菌特異的遺伝子であるIS900を指標としてin situ hybridization(ISH)法を実施し、腸間膜リンパ節にみられた病変内におけるIS900遺伝子の存在からヨーネ菌感染を証明するための新たな手法を確立する。

成果の内容・特徴

  • ELISA検査と糞便培養法による臨床検査でヨーネ病と診断された牛の腸間膜リンパ節にみられる病変は、類上皮細胞 肉芽腫の形成と多数の菌増殖を特徴とする感受性型病変あるいはリンパ濾胞周囲に小型の肉芽腫結節形成を特徴とし、それらの結節内に抗酸菌染色(チール・ネ ルゼン法)で菌がほとんど検出されない抵抗性型病変の二種類に分類することができる(表1)。
  • 感受性型病変や抵抗性型病変が認められたヨーネ病罹患牛のパラフィン包埋切片からDNAを抽出しnested PCR法を実施することによりヨーネ菌特異的なIS900遺伝子を検出することができる(表1)。
  • タイラマイド増感ISH法で検出されるIS900遺伝子シグナルは、感受性型病変に参画する浸潤マクロファージ、類上皮細胞、多核巨細胞およびラングハンス型巨細胞内にみられる。一方、抵抗性型病変では少数ではあるが抗酸菌染色で菌が検出される小型の肉芽腫結節(図1AおよびB)と検出されない肉芽腫結節(図2AおよびB)のいずれにおいてもIS900遺伝子シグナルを検出することが可能である。ISH法に用いたプローブの特異性は、非標識プローブを陰性対照とし標識プローブとの競合ISH法により確認することができる。

成果の活用面・留意点

  • 確立されたタイラマイド増感ISH法によるヨーネ菌特異的IS900遺伝子検出・診断法は、通常のホルマリン固定材料で検出可能であるため過去に採材された症例についてもさかのぼって検索可能である。
  • 本法ではFITC標識PCRプローブを使用しており、ヒートブロック交換型のPCR・ISH兼用サーマルサイクラー で簡便にプローブの作製やISH法が実施できる。また、これまでISH法で報告のあるRNAプローブに比べて同プローブは安定しているため、冷暗所での長 期保存も可能である。
  • 検出されるIS900遺伝子シグナルは、細胞壁を欠損した形態(スフェロプラスト)をとるヨーネ菌あるいはマクロ ファージ系細胞内で消化処理過程にあるヨーネ菌の遺伝子断片も検出できるものと思われる。今後、細胞壁欠損ヨーネ菌の病原性や感染機構を解明する上で本法 は有用であると考えられる。

具体的データ

表1 ヨーネ病罹患牛の臨床・病理組織学的検査結果

 

図1. 腸間膜リンパ節にみられた抗酸菌染色陽性の肉芽腫 1A:肉芽腫内に検出される抗酸菌

 

図2. 腸間膜リンパ節にみられた抗酸菌染色陰性の肉芽腫 2A:肉芽腫内には抗酸菌は検出されない(チール・ネルゼン法) 2B:連続切片上の同一細胞内に茶褐色微細顆粒状に検出されるIS900遺伝子のシグナル(矢印:ISH法)

 

その他

  • 研究課題名:In situ hybridization法による高感度かつ簡便なヨーネ菌特異遺伝子検出法の確立
  • 課題ID:13-02-01-*-118-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005年度
  • 研究担当者:田中省吾、佐藤真澄
  • 発表論文等:Tanaka et al. (2005) Vet. Pathol. 42:579-588.
法人番号 7050005005207