豚A群ロタウイルスのVP7ならびにVP4遺伝子型の分布

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要約

日本での豚A群ロタウイルスの主要なVP7遺伝子は豚でほとんど報告がないG9に型別され、近年検出されたヒト由来G9ウイルスの当該遺伝子と非常に近縁である。

  • キーワード:子豚下痢症、豚A群ロタウイルス、VP7遺伝子、VP4遺伝子、塩基配列
  • 担当:動物衛生研・ウイルス病研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7708、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

子豚下痢症の主要原因である豚A群ロタウイルス(GAR)のVP7ならびにVP4遺伝子型別は本ウイルス病の疫学解析やワクチン株の選定などに重要であり、欧米での主要なVP7遺伝子型はG3、G4、G5およびG11、VP4遺伝子型はP[6]ならびにP[7]とされる。しかしながら、日本ではこれらの分布状況は不明である。そこで、日本の下痢症子豚の糞便より検出した豚GARの両遺伝子型を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 2000-2002年に7県18農場36件の下痢発生時に子豚下痢便223例(各発生5-10例)を採取し、ロタウイルス検査をRNAのポリアクリルアミドゲル電気泳動法で実施した。その結果、18件(50%)の各下痢発生に豚GAR陽性例が2例以上認められたことから、これらの下痢に豚GARが関与したと考えられる。
  • 豚GAR 18株(1下痢発生時1株、13農場由来)を用いて、VP7ならびにVP4遺伝子型をRT-PCR法ならびにPCR産物のシーケンシングにより決定した(表1)。VP7遺伝子型は、7株がヒトGARの遺伝子型とされるG9に型別された。VP4遺伝子型は、6株が近年豚での新たな遺伝子型として報告されたP[23]に型別された。このように、近年の日本の豚GARの主要なVP7ならびにVP4遺伝子型は欧米で従来報告されていた型と異なっている。
  • 豚GAR G9のVP7遺伝子は、ヒトGAR G9の1980年代検出株よりも1990年代中期以降世界的に突如再出現した株とより近縁であった(図1)。また、異なった農場由来のVP7遺伝子塩基配列は6.1-7.2%の相違があったことから、当該遺伝子はごく最近豚集団に侵入したのではないと考えられる。
  • 豚GAR G9中2株(JP3-6とJP29-6)のVP4遺伝子はヒト由来AU19株と最も近縁なP[6]に属した。このことは、これら豚由来株の当該遺伝子はヒトGAR由来、あるいはAU19株の当該遺伝子が豚GAR由来である可能性を示唆している。

成果の活用面・留意点

  • 今回明らかにされた日本における豚GARのVP7ならびにVP4遺伝子型の分布成績はワクチン株の選定に有用である。
  • 近年世界的に突如再出現したヒトGAR G9のVP7遺伝子は豚GARを起源とし、当該ウイルスは豚GARとヒトGARの遺伝子再集合により出現した可能性が残されている。

具体的データ

表1. 豚GAR18 株のVP7 ならびにVP4 遺伝子型

図1.G9 GAR VP7 遺伝子の分子系統樹

その他

  • 研究課題名:ウイルス感染症の診断・防除技術の高度化
  • 課題ID:322-b
  • 予算区分:交付金(重点強化)、委託プロ(食品機能性)
  • 研究期間:2002~2003年度、2006~2010年度
  • 研究担当者:恒光裕、Tamara A, Teodoroff(ラプラタ大)、岡本清虎(十和田家保)、勝田賢、河本麻理子、
                      川嶌健司、宮崎綾子、吉井雅晃、鈴木孝子
  • 発表論文等:Teodoroff et al. (2005) J. Clin. Microbiol. 43:1377-1384.