飼料イネサイレージ中かび毒ウスチロキシンAの定量法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

サイレージ水抽出物を固相抽出精製し、高速液体クロマトグラフィーにより分析することにより、飼料イネを汚染する可能性のあるかび毒ウスチロキシンAを定量できる。

  • キーワード:飼料イネ、サイレージ、稲こうじ病、ウスチロキシンA、高速液体クロマトグラフィー
  • 担当:動物衛生研・安全性研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

天候不順等により、飼料イネに稲こうじ病が発生する。稲こうじ病起因菌は種々のかび毒を産生することが知られており、これらの物質の牛に対する影響が懸念されている。本研究では、稲こうじ病菌が産生する主要なかび毒であるウスチロキシンAのサイレージ中濃度を定量する分析法の開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • サイレージの水抽出物を固相抽出(Oasis MAX、Waters)で精製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析することにより、ウスチロキシンAを定量することができる(図1)。
  • 本法による平均回収率は89%~96%、日間の繰り返し精度も10 mg/kgレベルでは相対標準偏差(RSD)が10.4%と、充分な精度を有している。2.5 mg/kgレベルでは日間RSDが19.8%であることから、このレベルが定量下限である(表1)。
  • HPLCで検出されたピークの特異的吸収スペクトル(吸収ピーク207 nm, 253 nmおよび290 nm)からウスチロキシンAを同定できるので、分析の特異性が高い(図2)。
  • 稲こうじ病の発生が軽度であった飼料イネから調製したサイレージ中のウスチロキシンA濃度は定量下限以下であるが、稲こうじ病に高度に汚染した飼料イネから調製したサイレージには、8~26 mg/kg 程度のウスチロキシンAが含まれている(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 稲こうじ病発生飼料イネから調製したサイレージのウスチロキシンA汚染の程度を判断できる。
  • かび毒の汚染は圃場で均一ではないので、試料の採取にあたっては注意が必要である。可能であればコアサンプラーを使用することが望ましい。

具体的データ

図1 HPLC条件と典型的クロマトグラム(矢印がウスチロキシンA)

図2 検出ピークの吸収スペクトル

表1 平均回収率および繰り返し精度

表2 稲こうじ病発生飼料イネから調製したサイレージ中のウスチロキシンA濃度

その他

  • 研究課題名:飼料・畜産物の生産段階における安全性確保技術の開発
  • 課題ID:323-d
  • 予算区分:委託プロ(えさプロ)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:宮崎茂、松本裕一(福島県)、宇地原務(沖縄県)森本和秀(広島県)
  • 発表論文等:Miyazaki et al. (2009) J. Vet Med. Sci. 71(2):239-241