新規環境汚染物質である有機フッ素化合物のニワトリにおける体内動態

要約

ニワトリでは、パーフルオロオクタンスルホン酸は主に肝臓に、パーフルオロオクタン酸は血液や腎臓に分布する。パーフルオロオクタンスルホン酸の血中半減期は長く、高い残留性を示すため、注意が必要である。

  • キーワード:ニワトリ、PFOS、PFOA、生物学的半減期、組織分布
  • 担当:動物衛生研・安全性研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

有機フッ素化合物(perfluorinated compounds:PFCs)は撥水剤や表面コーティング剤、樹脂製品などとして産業界や家庭で広く使用されてきた物質であるが、近年世界中の環境や生体における残留蓄積が相次いで報告され、新たな環境汚染物質として注目されている。PFCsの体内動態については、これまで哺乳類を対象とした研究が行われ、これらの生物学的半減期に関して著しい動物種差や性差が認められているが、鳥類の研究例はほとんど無く、不明な点が多い。そこで本研究ではニワトリを用いて、代表的なPFCsであるパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とパーフルオロオクタン酸(PFOA)の生物学的半減期や組織分布について検討する。

成果の内容・特徴

  • 血液中のPFOAおよびPFOS濃度は、各々の投与濃度を反映する(図1)。PFOAの消失速度定数はPFOSのおよそ6倍である。雄ニワトリ血中における生物学的半減期は、PFOA、PFOSでそれぞれ4.6日および31日で、哺乳類と同様に鳥類におけるPFOSの残留性はPFOAよりも高い。
  • ニワトリにおけるPFOSおよびPFOAの生物学的半減期は、いずれも哺乳類で報告されている値と比べると短い。
  • PFOSの組織分布や体内動態はPFOAと大きく異なる(図2)。肝臓はPFOSの主要な蓄積器官であり、腸管循環が起きている可能性がある。一方、水溶性の高いPFOAは主に血液に分布し、尿排泄される前に腎臓に集積するものと思われる。

成果の活用面・留意点

  • 今研究における生体内半減期の計算では、PFOSおよびPFOA消失期間中の体重増加に伴う濃度希釈を考慮していない。体重増加を考慮して計算した場合、PFOAではほとんど違いはないが、PFOSの半減期は上記値よりも4倍程度大きな値となる。
  • 環境中に残留するPFCsのうち、PFOAに比べPFOSは鳥類の筋肉や卵により蓄積しやすいことが予想される。従って、ニワトリをはじめとする家畜の食物連鎖によるPFCsの汚染や挙動を解明することが重要である。

具体的データ

図1.皮下埋込浸透圧ポンプにより4週間連続投与された雄ニワトリ血液中のPFOS(A)およびPFOA(B)濃度(ng/mL)。  :低濃度群(0.1 mg PFOA/mL, 0.02 mg PFOS/mL)、:高濃度群(0.5 mg PFOA/mL, 0.1 mg PFOS/mL)、 :対照群(生理食塩水)を示す。PFOAおよびPFOSはLC/MS/MSにより測定した。

図2.ニワトリ体組織(血液・脳・腎臓・肝臓)中におけるPFOS およびPFOAの相対負荷量(%)。各組織中濃度に組織重量を乗じて負荷量を算出した。総血液量は体重の5%と仮定した。

その他

  • 研究課題名:飼料・畜産物の生産段階における安全性確保技術の開発
  • 課題ID:323-d
  • 予算区分:環境保全(公害防止)
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:グルゲ キールティ シリ、山中典子、宮崎 茂、山下信義(産総研)、Hoon Yoo (Michigan State U)
  • 発表論文等:Yoo et al. (2009) Ecotoxicol Environ Saf. 72(1): 26-36.
法人番号 7050005005207