ブタにおける発情周期中の卵胞発育と血中インヒビン動態

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要約

ブタの正常発情周期中には2回の卵胞群の発育が起きる。各卵胞発育の時期ではインヒビンAとFSH分泌は相反した相関が認められ、インヒビンAはFSH分泌を制御する主要なホルモンである。

  • キーワード:卵胞発育、インヒビンA、FSH
  • 担当:動物衛生研・生産病研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ブタの主要な生殖ホルモンである総インヒビン、インヒビンA、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール17β及びプロジェステロンの測定に非放射性物質を用いる方法(時間分解蛍光測定法)を応用する。また、正常な発情周期を営むブタにおける卵胞及び黄体の消長と末梢血中の各種生殖ホルモン動態の関連について、卵胞発育とインヒビンを中心に解明し、効率的な繁殖衛生管理手法の開発や繁殖障害の病態解明のための基礎的知見とする。

成果の内容・特徴

  • ブタ末梢血中総インヒビン、インヒビンA、FSH、LH、エストラジオール17β及びプロジェステロンの時間分解蛍光測定における最小感度は末梢血中濃度の測定に十分な値であり、時間分解蛍光測定法により各種ホルモン濃度を測定することができる。
  • 正常発情周期を営む経産豚を用い、排卵後10日目から次回排卵後10日目まで、経直腸超音波画像診断法により卵胞及び黄体の消長について解析すると、ブタ正常発情周期中では、黄体後期~卵胞期及び黄体初期に卵胞数の増加が認められる(図1)。また、黄体期後期~卵胞期では、小卵胞数の増加に続く大卵胞数の増加が認められるが、黄体初期には小卵胞数のみ増加する。
  • 正常発情周期を営むブタにおける末梢血中各種生殖ホルモンの濃度推移は図2の通りである。末梢血中インヒビンA濃度は卵胞数の変化と相関(r = 0.46)した動態を示す。卵胞数の増加が認められる排卵10~3日前の黄体後期~卵胞期(r = -0.38)及び排卵0~9日後の黄体初期(r = -0.47)に、FSH濃度と負の相関を示しながら変動することから、インヒビンAはFSH分泌を制御する主要なホルモンであると推察される。エストラジオール17β濃度は大卵胞数の増加が認められる黄体後期~卵胞期においてのみ上昇する。

成果の活用面・留意点

  • 末梢血中インヒビン濃度の推移からブタの卵胞発育動態を推察することができる。
  • 正常発情周期を営むブタの卵巣の変化と生殖ホルモン動態に関する知見は、効果的な発情同期化技術などを開発するための基礎的知見及び繁殖障害の病態解析のための対比データとして活用することが期待される。

具体的データ

図1 ブタ発情周期における総卵胞数、小卵胞数及び大卵胞数並びに最大黄体の直径の変化

図2 ブタ発情周期における a) インヒビン A 及び総インヒビン、 b) エストラジオール 17β及びプロジェステロン並びに c) FSH 及び LH の変化

その他

  • 研究課題名:生産病の病態解析による疾病防除技術の開発
  • 中課題整理番号:212k
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:吉岡耕治、野口倫子(麻布大)、鈴木千恵
  • 発表論文等:Noguchi M. et al. (2010) Reproduction 139(1):153-161