酪農場における牛白血病ウイルス伝播のリスク要因の評価

要約

酪農場における牛白血病ウイルスの伝播に関して、除角の実施、夏季のアブが非常に多いこと、つなぎ飼いでないことがリスク要因として重要であると考えられる。

  • キーワード:地方病性牛白血病、血清疫学、横断研究
  • 担当:動衛衛生研・疫学研究チーム、ウイルス病研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

近年、牛白血病は年間1,000頭以上の届出報告がある。その多くは牛白血病ウイルス(BLV)を原因とする地方病型牛白血病と考えられており、感染牛のうち数%が発症することを考慮すると、BLVは潜在的に我が国に広くまん延していることが懸念される。本研究は、BLV感染酪農場の血清学的検査と聞き取りによるBLVの伝播要因に関する疫学情報を用いて統計学的解析を行い、酪農場内のBLV伝播に特に関連している要因を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 研究に参加した国内7県における、ELISA抗体陽性農場(90戸)の抗体陽性率(各農場の検査頭数に占める陽性頭数の割合)は広範囲に分布している(図1)。その中央値はおよそ50%であり、これを中心にして約半数の農場が農場内抗体陽性率20~70%の範囲に含まれる。
  • 抗体陽性率と10項目の疫学調査項目について、一般化線形混合モデルを用いて分析すると、除角を実施する農場(係数:1.11、P=0.0002)、夏季にアブが非常に多い農場(係数:0.82、P=0.01)、牛をつなぎ飼いにしない農場(係数:0.71、P=0.03)において抗体陽性率が高くなる傾向が認められ、これらは牛白血病ウイルス伝播のリスク要因と考えられる(表1)。
  • 母牛由来の初乳を給与している農場では抗体陽性率が低くなる傾向が認められたが(係数:-1.11、P=0.03)、初乳の給与については、リスク要因とする報告と、防御要因とする報告があることから、今後詳細に検討していく必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 本研究結果により、例えば除角について重点的な衛生的な手技・処置の遵守、積極的なアブの駆除措置などによって、より効率的な牛白血病コントロールが期待できることを示している。
  • 今後、調査結果の詳細な解析や今回の調査項目以外の要因についての検討とともに、地域を全国に拡大し、国内の状況をより正確に把握する必要がある。

具体的データ

図1 農場内抗体陽性率による分析対象農場の分布(n=90)

表1 一般化線形混合モデルによる分析によって得られたBLV農場内伝播に関する飼養管理要因

その他

  • 研究課題名:疾病及び病原体の疫学的特性解明による防除対策の高度化
  • 中課題整理番号:322h
  • 予算区分:平成19年度人畜共通感染症等危機管理体制整備調査等委託事業、基盤
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:小林創太、筒井俊之、山本健久、早山陽子、亀山健一郎、小西美佐子、村上賢二
  • 発表論文等:Kobayashi S. et al. (2010) BMC Veterinary Research. 6:1
法人番号 7050005005207