醤油・中華めん用硬質小麦新品種「タマイズミ」

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要約

小麦「タマイズミ」は、硬質で原粒蛋白質含量が高く、製粉歩留が高く、醤油や中華めん用に適する。成熟期は「農林61号」より2~3日早く、耐倒伏性がやや優れる。穂数はやや少なく、収量性はやや少ない。三重県、栃木県で奨励品種に採用予定。

  • キーワード:小麦、硬質、高蛋白質、高製粉歩留、白粒、新品種
  • 担当:作物研・麦類研究部・小麦育種研究室
  • 連絡先:電話0298-38-8861、電子メールmfujita@affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、作物・冬作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

関東東海地域の小麦は、主として「農林61号」などがうどん用に使われているが、近年実需者から醤油用などの新用途向け小麦も要望されてきている。醤油用としては、原粒蛋白質含量が高い原料が求められており、中華めん用にも硬質で高蛋白の品種が求められている。そこで、「農林61号」よりやや早生で耐倒伏性が優れる新規用途向け硬質小麦品種の育成を行った。

成果の内容・特徴

小麦「タマイズミ」(旧系統名:関東123号)は、早生、良質、白粒系統の育成を育種目標として、1989年度に「関系W364」/「関系W361」の人工交配を行い、F2世代でトウモロコシ法による半数体育種法を適用し、選抜固定を図り育成した品種である。2002年度の世代は、倍加半数体第12代(DH12)である。

「農林61号」と比較して、次のような特徴がある(表1)。

  • 播性程度はI~IIで、出穂期で1日、成熟期で3日程度早生の褐ふ品種である。
  • 稈長はやや短く、穂長はやや長く、穂数はやや少ない。耐倒伏性はやや優れる。
  • 粒の形は中、粒大はやや大で、粒の色は黄で、粒質は硝子質である。
  • 千粒重と容積重はやや大きく、収量性はやや少なく、見かけの品質はやや優れる。
  • 縞萎縮病にやや強く、赤かび病には同程度、赤さび病とうどんこ病には弱い。穂発芽性は、やや難である。
  • 製粉歩留が高く、ミリングスコアはやや高い。60%粉の灰分が多く、60%粉の色はやや劣る。
  • 原麦及び60%粉の粗蛋白質含量が高く、中華めんの粘弾性・なめらかさに優れ、醤油や中華めん用に適する。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地東部の平坦地に適する。
  • 穂数がやや少ないため、その確保に努め、収量の安定化を図る。
  • 穂発芽性は農林61号よりやや劣り、「やや難」で刈り遅れによる品質劣化が懸念されるので、適期収穫に努める。
  • うどんこ病、赤さび病に弱いので、防除を徹底する。また、縞萎縮病に完全な抵抗性ではないので、汚染圃場での栽培には注意する。

具体的データ

表1.小麦「タマイズミ」の特性

その他

  • 研究課題名:新規用途向け小麦系統の開発、温暖地東部向け中華めん用等の良色相小麦の早期選抜
  • 予算区分:経常・交付金・21世紀1系
  • 研究期間:1989~2001年度
  • 研究担当者:藤田雅也、乙部(桐渕)千雅子、吉岡藤治、松中仁、柳沢貴司、吉田久、山口勲夫、長嶺敬、
                      瀬古秀文、牛山智彦、天野洋一、小田俊介