複数の系統に保有される遺伝子を集積するためのマーカー選抜の効率的な手順

要約

同質遺伝子系統の開発を目的とする場合はドナーの対称的な配置と交配、戻し交配が不要の場合は直列的な配置と交配により、全有用遺伝子をヘテロで持つ個体を作出した後、倍加半数体法と選抜個体間の交配によりホモ型個体を作出し、選抜する。

  • キーワード:マーカー選抜、遺伝子集積
  • 担当:作物研・稲マーカー育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8950
  • 区分:作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年、有用遺伝子と連鎖した多くのDNAマーカーが開発され、これらのマーカーを用いることにより高度の遺伝子集積系統の開発が期待される。有用遺伝子が2,3個の系統に保有される場合ならば集積法は簡易であるが、4個以上の系統に分散する遺伝子を集積する場合には、効率的に集積するためのガイドラインが必要である。そこで、多くの系統に分散して保有されている有用遺伝子をマーカーを用いて一つの遺伝子型に集めるための最適な交配・選抜の手順として、まず、目的とする全遺伝子をヘテロに持つ個体を作出するための最適な交配方式(StepI)を明らかにし、次にStepIIとして、StepIで作出されたヘテロの個体から、全座で優良ホモの遺伝子型を選抜するための最適な選抜方式を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 特定の遺伝的背景に望ましい遺伝子を集積する場合は、遺伝子の集積作業に入る前に、ドナー系統別に反復系統との戻し交配を行い、目的遺伝子をヘテロに持つ個体を選抜する(図1)。
  • 特定の遺伝的背景に集積する場合のStepIでは、戻し交配で得られた個体(M'i)間の交配方式として、交配順序に関しても個体(マーカー数mi)の配置に関しても、対称型の方式がよい(表1a)。例えば、ドナー数が4の場合では、(M'1M'2)(M'3M'4)、m1+m2=m3+m4となるように配置して交配する。
  • 特定の遺伝的背景がなく、戻し交配が不要でドナー系統(Mi)を直接交配する場合のStep Iでは、直列型パターンの方式でマーカー数(mi)の少ない系統から順番に交配するのがよい。例えば、ドナー数が4の場合では、〔(M1M2)M3〕M4、m1≦m2≦m3≦m4となるように配置して交配する(表1b)。すでに開発された同質遺伝子系統群をドナー系統とする場合は、この方式を用いる。
  • StepIで得られたヘテロ個体からホモ個体を選抜するStepIIでは、倍加半数体法と選抜個体間の交配を組み合わせた選抜方式(RHC、図2)に従うと、目的マーカー数が20の場合でも高い確率で選抜に成功する(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本集積方式に従うと、交配や選抜回数、調査個体数を少なく抑えて、複数の系統に分散する有用遺伝子を効率よく集積することができる。
  • 倍加半数体法の適用が困難な場合は、自殖と選抜個体間の交配を繰り返す方式に従うのが望ましい。
  • 本集積方式は2倍体の自殖性作物を対象としたものである。

具体的データ

図1 k 個のドナー系統からのマーカー選抜(MAS)に基づく遺伝子集積法のフロー図

表2 StepI以降における全ての目的マーカーを集積させた遺伝子型が獲得される成功確率

表1 遺伝子集積のための最適な交配手順

図2 倍加半数体法と選抜個体間の交配を繰り返す選抜方式 (RHC) のフロー図

その他

  • 研究課題名:稲病害虫抵抗性同質遺伝子系統群の選抜と有用QTL遺伝子集積のための選抜マーカーの開発
  • 中課題整理番号:221-g
  • 予算区分:基盤、委託プロ(新農業・政策ニーズ)
  • 研究期間:2006~2009
  • 研究担当者:石井卓朗、安東郁男、林武司(生物研)、米澤勝衛(京都産大)
  • 発表論文等:1)Ishii, T. et al. (2007) Crop Sci. 47 : 537-546 、2) Ishii, T. et al. (2007) Crop Sci. 47 : 1878-1886、3) Ishii, T. et al. (2008) Crop Sci. 48 : 2123-2131