多収で早期肥大性に優れる青果用カンショ新品種「からゆたか」

要約

「からゆたか」は、いもの肥大が早く、青果用カンショとしてはごく多収である。いもの外皮はやや滑らかで条溝がなく外観が良い。蒸しいもの食味や糖度は「高系14号」並みで肉質は粘である。

  • キーワード:サツマイモ、青果用、早期肥大、多収
  • 担当:ブランド農産物開発・カンショ品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-8500
  • 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

青果用カンショの栽培期間は通常約120~160日と長く、気候条件や前後作により栽培期間が十分に取れない地域では導入が難しい。また、青果用カンショは年間のうち5~8月の価格が最も高く、高値出荷を狙った早掘栽培が行われている。早掘栽培では「高系14号」が多く使われているが、いもの外観や収量は十分ではない。これらから早期肥大性品種への要望が根強くある。そこで、短い栽培期間でいもが肥大し、収量性や外観品質に優れる品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「からゆたか」(旧系統名:関東132号)は、ごく多収で蒸切干適性のある「関東123号」を母、多収でいもの外観に優れる「ベニオトメ」を父とする交配組合せから選抜した品種である。
  • 「からゆたか」はいもの肥大が早く、育成地では挿苗後約100日で平均1個重が200gとなる。1株当たりの上いも数も多く、収量は「ベニアズマ」に比べて早掘栽培で1.8倍、標準栽培で1.6倍にのぼり、ごく多収である。(図2、表1)
  • いもの外皮はやや滑らかで、条溝がなく、「ベニアズマ」「高系14号」に比べて外観が良い。(図1)
  • 蒸しいもの食味や糖度は「高系14号」並みで、肉質は粘で、焼きいもに適する。(表2)
  • つる割病に強く、「ベニアズマ」よりも貯蔵性が良い。(表1、2)

成果の活用面・留意点

  • 早掘栽培などの短期間の栽培に適している。「からゆたか」の導入により、既存産地では短期間の栽培での収量が向上するほか、栽培期間が限定される地域でのカンショ新規作付けが可能になる。佐賀県上場地区のバレイショ後作で導入が見込まれている。
  • つるの伸長が早く、巻きつる性があるので、適期に採苗する。また、栽培期間が長くなると規格外の大いもの割合が増えるため、適期に収穫する。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:高品質・高付加価値で省力栽培適性に優れたカンショの開発
  • 中課題整理番号:320b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003~2013年度
  • 研究担当者:高田明子、熊谷亨、藏之内利和、中村善行、片山健二、藤田敏郎、中谷誠
  • 発表論文等:2014年3月品種登録出願(出願番号:29026号)