出芽期大豆の核内タンパク質群は冠水ストレスにより同調的に抑制される

要約

冠水ストレス下の大豆において、プレmRNAプロセッシングおよびプレリボソーム構築が抑制され翻訳が阻害される。さらに、ヒストンH3を中心とするクロマチン構造が変化する。

  • キーワード:大豆、出芽期、湿害、プロテオミクス、核タンパク質
  • 担当:作物開発・利用・麦・大豆遺伝子制御
  • 代表連絡先:電話029-838-8693
  • 研究所名:作物研究所・畑作物研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

大豆は出芽期の数日間の冠水ストレスで根に障害が発生し、その後の生育遅延を引き起こす。大豆の湿害を生育初期に回復することは、わが国における水田転換畑での大豆栽培のリスクを低減させ、生産性の安定・向上に貢献する。オミクス解析を用いて、湿害発生機構を解析すると、非常に多くのタンパク質、遺伝子および代謝物が変動しており、鍵となるタンパク質を絞り込むことは困難である。そこで、核プロテオミクス解析により、代謝系の上流で変動するタンパク質群を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 大豆(品種エンレイ)を用いて、出芽期の冠水処理時の根から核タンパク質を精製しプロテオミクス解析を行った。出芽期の冠水ストレスにより、mRNA成熟に関与するタンパク質(エクソン結合複合体タンパク質等)およびリボソーム前駆体構築に関与するタンパク質(NOP1・NOP56)が顕著に減少する(図1)。
  • 出芽期はヒストン等のクロマチン構造に関与するタンパク質群が増加し相互作用しているが、これらの多くが減少しつつ相互作用は維持される(図2)。
  • リボソーム構築系タンパク質群に着目すると、40Sおよび60Sリボソームのみならず、翻訳開始因子および伸長因子も出芽期の冠水ストレスにより抑制されている(図3)。
  • ヌクレオソームのコアを構成する各種ヒストンのうち、ヒストンH3が、冠水ストレスによりmRNAおよびタンパク質レベルの両方で顕著に減少している(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究における冠水下での核タンパク質群の変動は「エンレイ」で得られた成果である。
  • 本研究で得られた冠水下における核タンパク質群に関する知見は、冠水応答を包括的に制御する手法の開発に向けた基礎となるものである。

具体的データ

その他

  • 中課題名:ゲノム情報を活用した麦・大豆の重要形質制御機構の解明と育種素材の開発
  • 中課題整理番号:112g0
  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:小松節子、平賀勧、Xiaojian YIN
  • 発表論文等:
    1) Komatsu et al. (2014) Mol. Biol. Rep. 41:1127-1139.
    2) Yin et al. (2015) J. Proteomics 119:183-195.
法人番号 7050005005207