カラマツ林床への導入に適した牧草の選定

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要約

カラマツ林床への導入に適した牧草を選定した。追肥を行わない条件で,生産力と 生産力の持続性について評価した結果,リードカナリーグラスが最も優れており,2 番目はオーチャードグラスである。

  • 担当:草地試験場・山地支場・山地草地研究室
  • 連絡先:0267-32-2356
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:資源利用
  • 対象:牧草類
  • 分類:指導

背景・ねらい

カラマツ林を混牧林として活用するには,牧草を導入し,林床を富化することが有効である。また,混牧林では,低施肥下での草地維持が重要になると考えられるので,無追肥で持続性のある牧草を生産力とその持続性の面から評価した。

成果の内容・特徴

35年生のカラマツ林(通常900~1200本/ha)を4段階に強間伐し,林床のリター層を土壌と撹乱した後施肥し(N:P2O4:K2O=5:6:5kg/10a),7月に6草種の牧草をそれぞれ単播で導入した(播種量:4kg/10a)。翌年から3年間無施肥の条件下で,年3回の刈り取りによって生産量と持続性を調べた。ただし,2年目で今後の生産量が見込めないと判断した3草種は,3年目には調査しなかった。また、カラマツの樹冠成長等も調査した。6草種の品種は,シロクローバ:リーガル(以下WCと呼ぶ),ペレニアルライグラス:キヨサト(PR),オーチャ-ドグラス:キタミドリ(OG),レッドトップ:ストレイカー(RT),ベントグラス:ベンクロス(BT),リードカナリーグラス:ベンチャー(RC)であった。

  • 初年度生産量は、RCが4ton/ha(100本区)~2.5ton/ha(500本区),同様にOGが3.2~1.8ton/haである(図1)。2年目の生産量は,RCが2/3程度に,OGが3/5程度に低下する。このことから林床へ導入する牧草としては,2年目までは,RCが最も適しており,次にOGが優れている。ただし,3年目は,立木密度に関係なく,RC・OG共に0.5ton/ha程度に低下する。
  • PRやWCの生産量は,立木密度に関係なく2年目で著しく低下する。これらの生産量の低下及びRC・OG・RTの3年目の低下は,肥料不足が大きく影響していると考えられる。
  • カラマツの胸高直径成長は,100~300本区では良かったが,500本区ではあまり良くない。(表1)。また,樹冠の開空部の年閉鎖速度は,かなり速いことが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • 他の針葉樹林床に牧草を導入し,低施肥下で放牧を行う際,参考となる。
  • RCは,アルカロイド含有率の少ない新品種を用いたが,嗜好性が未確認である。 開口部は大きくした方が望ましい

具体的データ

図1.草種別乾物収量の年次変動

表1.立木密度の違いによるカラマツの胸高直径成長と樹冠成長

その他

  • 研究課題名:林畜複合のための林床改良利用法の確立 2)林床の環境条件と導入草種の発芽・定着、生育
  • 予算区分:大型別枠(新需要)
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)
  • 研究担当者:下田勝久,河野道治,林治雄,斉藤吉満
  • 発表論文等: カラマツ林床下への牧草導入技術の開発~導入牧草の生産量に及ぼす造成条件の影響~,日草誌,42巻別号,1996 カラマツ林床下への牧草導入技術の開発~導入牧草の生産量と永続性~ 日草誌,43巻別号,1997