家畜の眼の開閉変化を撮影・解析するシステム
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要約
家畜の眼の開閉変化の日内変動を明らかにするために、眼瞼動作撮影・解析システムを開発した。本システムを用いて眼の開閉変化を撮影・解析することにより、家畜の睡眠・覚醒リズムについて情報を得ることができる。
- 担当:畜産試験場 生理部 神経生理研究室
- 連絡先:0298-38-8644
- 部会名:畜産
- 専門:生理
- 対象:全家畜
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜の休息・活動変化や睡眠・覚醒変化は脳全体の神経活動変化を反映している。これらの変化には日内リズムがあると考えられるが、家畜では殆ど明らかにさ
れていない。本研究では、家畜の休息・活動変化や睡眠・覚醒変化を明らかにしていくための眼瞼動作撮影・解析システムを開発する。
成果の内容・特徴
- 本システムは有線あるいはテレメータ方式の眼瞼動作撮影装置と画像解析システムから構成さ
れており、家畜に侵襲を加えることなく、眼の開閉変化を明らかにすることができる。
- 有線方式の撮影装置(重量約50g)は超小型CCDカメラと眼の周辺を照らす光源(赤外発光ダイオード4個)から構成されている。
- テレメータ方式は超小型CCDカメラ、ダイオード、増幅回路・変調回路及び送信アンテナを 含めた送信部、電源部から構成
されている。電源部はニッケル・水素電池の単三形を使用し、24時間連続撮影が可能である。送信された画像は一般家庭用のテレビで受信され、ビデオ機器で
録画される。画像信号の受信可能な距離は約20mであった。テレメータ方式の撮影装置
(図1)の全重量は約880gである。
- 眼瞼動作撮影装置をマスクに固定した後、馬(サラブレッド種、雌・雄、4頭)あるいは子牛 (ホルスタイン種、雄、3頭)の頭部に装着して眼の開閉変化を撮影した。タイムラプスビデオに録画された映像(例;
図2)から肉眼で子牛の眼瞼の開閉状態を観察し、その変化を
図3にまとめた。また、ビデオキャプチャーボードにて2秒毎に1フレームの間隔でコンピュータに取り込んだ画像を画像解析プログラム(Halcon)を用いて解析し、眼の開閉と開眼時に露出する眼球の面積を算出した。
図4には馬房に係留されている馬の眼の開閉変化(約24時間分)を解析した結果を示した。これらの結果から、子牛や馬は夜間(暗期)に長時間眼を閉じることはなく、かなり頻繁に眼を開けていることが示された。
成果の活用面・留意点
- 装置装着後のトラブルを防止するためには、あらかじめ家畜を頭部マスクに馴致させておくことが必要である。
- 画像解析の際の誤認識を防ぐためには、画像に輝度むらが生じないように室内の明るさをできるだけ一定に保つことが必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 大脳の電気活動と多次元生理現象による生体リズムの研究
- 予算区分: 経常、交流共同研究
- 研究期間: 平成12年度(平成9~12年度)
- 研究担当者: 根本鉄、齋藤敏之、本田善文、楠瀬良、甲斐眞、小林登史夫、陳文西、大西博之、粕谷悦子、作本亮介
- 発表論文等:
1.Nemoto, T., Saito, T., Kasuya, E., Honda, Y., Nakamura, M., Kobayashi, T., Chen, W., Tamada, I., Kusunose, R. and Kai, M. (2000)
Development of an eye camera for measuring eyelid and eyeball movements in domestic animals.
2.根本鉄、齋藤敏之、本田善文、楠瀬良、甲斐眞(1999年)長時間眼瞼測定装置の開発、第95回日本畜産学会講演要旨、p.100。