シバの高再分化遺伝子型の選抜とアグロバクテリウム法による形質転換

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要約

シバにおいて完熟種子由来で培養適性のある個体を選抜することができる。維持された植物体の生長点から繰り返し培養系を確立でき、この培養系を使用してアグロバクテリウム法による形質転換植物体を作成することができる。

  • キーワード:飼料作物育種、シバ、形質転換、アグロバクテリウム法
  • 担当:畜産草地研・飼料作物開発部・育種資源研究
  • 連絡先:電話0287-37-7552、電子メールtriticum@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

シバは他殖性で種子からは同じ遺伝子型が得られず、形質転換に必要な培養適性の高い個体を維持できない。そのため、培養適性のある個体を選抜し、生長点などから培養を行うことのできる培養系が必要であった。そこで本研究では、培養適性のある個体を選抜するとともに、生長点からの培養系を確立し、アグロバクテリウム法を用いた遺伝子導入手法を構築することを目的とした 。

成果の内容・特徴

  • シバ(Zoysia japonica)の完熟種子からカルスを誘導し、高率に再分化する遺伝子型を選抜することができる(図1、左)。
  • この遺伝子型は再分化植物でも培養適性が維持され、この茎頂の生長点を外植体とすることで繰り返し培養系を確立できる(図1、右)。
  • アグロバクテリウムLBA4404からのpIG121Hm(図2)の一過性の遺伝子導入によるレポーター遺伝子の発現によりアグロバクテリウム法の最適な遺伝子導入条件を明らかにすることができる(表1、2)。感染、共存培養時のアセトシリンゴン濃度は50mg/Lが適当である。
  • この遺伝子型から誘導されたカルスは、再分化効率が高いため、アグロバクテリウム法により効率よく外来遺伝子を導入することができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 生長点を外植体とすることで繰り返し培養系を確立できる新規特性を有するので、品種登録を行う予定。
  • アグロバクテリウムの他の系統EHA101では、ほぼ同様の効果を期待できる。

具体的データ

図1 .シバのカルス誘導と再分化植物体

 

図2.形質転換植物体のGUS 遺伝子のPCR

 

表1.アグロバクテリウムの感染および共存培養の各種条件がGUS 活性に及ぼす影響

 

表2.培地条件

その他

  • 研究課題名:光合成阻害型除草剤選択制芝草類の作出技術の開発
  • 予算区分:新雑草防除
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:蝦名 真澄、高溝 正、小林 真、中川 仁、小林 正樹(日産化学工業(株))
  • 発表論文等:特許出願「シバ属植物の再分化植物体及び形質転換植物体」
                      出願番号:特願2002-371053.