肥育豚の体組織におけるダイオキシン類の濃度

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

肥育豚の筋肉および脂肪組織中の濃度は給与飼料の濃度を反映して、成長に伴い減少するが、肝臓中の濃度は変らない。

  • キーワード:家畜生理・栄養、肥育豚、ダイオキシン類、飼料、移行・蓄積
  • 担当:畜産草地研・家畜生理栄養部・生体機構研究室
  • 連絡先:電話029-838-8646、電子メールkounishi@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

家畜の摂取したダイオキシン類が畜産物に含まれ、ヒトに移行するおそれがある。そこで、これまで不明であった肥育豚の成長に伴う体組織におけるダイオキシン類の濃度の変化を調査し、飼料に含まれているダイオキシン類がどのように移行・蓄積するか検討する。

成果の内容・特徴

  • 肥育豚(ランドレース種去勢雄豚)を1、3、4.5ならびに6か月齢でと殺して、筋肉、脂肪(皮下脂肪)ならびに肝臓を採取し、給与飼料とともにダイオキシン類の濃度を求めた。
  • 試料中のダイオキシン類の濃度をフルタームでガスクロマトグラフィー質量分析法で測定した。13種類のポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)、15種類のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)ならびに、12種類のコプラナーポリ塩化ビフェニール(Co-PCB)のそれぞれの濃度に毒性等価係数を乗じて毒性等量を得た。これらの毒性等量を合計して、ダイオキシン類の濃度とした。
  • 筋肉中の濃度(0.0014~0.0569pg-TEQ/g)は極めて低く、飼料中の濃度(図1)の低下に伴って急激に減少することがうかがわれた(図2)。脂肪中の濃度(0.0547~0.3203pg-TEQ/g)も給与飼料の濃度低下に伴い減少することがうかがわれた(図3)が、肝臓中の濃度(0.1647~0.3264pg-TEQ/g)は、筋肉や脂肪ほど急激に減少しなかった。
  • 筋肉および脂肪に含まれるダイオキシン類の構成割合は給与飼料のそれに近似していたが、肝臓に含まれるダイオキシン類の構成割合はそれらと明らかに異なっており、1か月齢から6か月齢までほぼ同様なパターンで推移した(図4)。
  • 飼料に含まれるダイオキシン類は、肥育豚においては肝臓に蓄積する傾向が見られ、飼料由来のダイオキシン類は体内で代謝されにくいものと考えられた。

成果の活用面・留意点

  • 肥育豚体内へのダイオキシン類の蓄積を低減させるための基礎情報となる。
  • ダイオキシン類の濃度が低い飼料を給与することで、筋肉(豚肉)中のダイオキシン類の濃度を低下できる。
  • 農林水産省の(2000)の調査では、国産豚肉のダイオキシン類の濃度が0.001~0.185pg-TEQ/gであった。本研究の値はこの範囲に入るものであった。

具体的データ

図1 飼料中の濃度 図2 筋肉中の濃度

 

図3 脂肪中の濃度 図4 肝臓中の濃度

その他

  • 研究課題名:多孔性物質添加飼料給与によるダイオキシン類の散乱系およびブロイラーへの移行・蓄積の低減化
  • 予算区分:環境ホルモン
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:西村宏一、宮本 進、山岸規昭、秋田富士、田辺 忍
  • 発表論文等:西村他 (2002) 養豚会誌39:11.