サイレージの好気的変敗を抑制できる乳酸菌TM1・TM2株

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要約

飼料作物から新規に分離したヘテロ発酵型乳酸菌TM1株またはTM2株をトウモロコシや予乾イタリアンライグラスのサイレージ調製時に添加すると、酢酸含量が増加してサイロ開封後の好気的変敗を抑制できる。特にTM1株は現在の市販菌株と同等以上の能力を持つ。

  • キーワード:飼料利用、乳酸菌、トウモロコシ、サイレージ、好気的変敗
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・資源循環研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7004、電子メールyamada@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

トウモロコシや低水分グラスのような材料ではサイレージ発酵品質の良いものが得られやすいが、サイロ開封後の好気的変敗が問題になっている。好気的変敗が起こると、サイレージの栄養価や摂取量の低下、ひいては家畜の健康の悪化や材料の完全廃棄など、畜産業において重大な損失が生じる。従来からプロピオン酸などの化学製剤が好気的変敗の抑制に有効であることは知られているが、これらの化学製剤はコストが高く、取り扱いにくいという問題点がある。そこで、より安価にサイレージの好気的変敗を抑制可能な乳酸菌株を選抜する。

成果の内容・特徴

  • 飼料作物から分離・選抜した乳酸菌TM1株とTM2株は市販されているLactobacillus buchneriとは異種のLactobacillus属のヘテロ発酵型乳酸菌で、pH3.8で生育が可能であり、サイレージ調製に利用できる(表1)。
  • 選抜乳酸菌TM1株またはTM2株をトウモロコシと予乾イタリアンライグラスサイレージに添加することにより、サイレージ中の酵母増殖を抑え、好気的変敗の指標である温度上昇を遅延させることができ、特にTM1株の効果が優れている(図1)。
  • TM1株またはTM2株を添加したトウモロコシサイレージの貯蔵損失(5ヶ月間貯蔵後の乾物減少量)と変敗損失(好気的状態に2日間放置後の乾物減少量)を測定した結果、無添加区と比べ、総乾物損失(貯蔵損失+変敗損失)を顕著に減少させる(図2)。
  • 地下サイロを用いて、TM1株を添加(添加量約6.7×105cfu/g原物)したトウモロコシサイレージには無添加区よりも酢酸含量が増加することによって好気的安定性も改善される(表2)。
  • 以上より、特にTM1株は現在市販されているL. buchneri と同等以上のサイレージ変敗防止機能を持つ実用性の高い新規へテロ発酵型乳酸菌である。

成果の活用面・留意点

  • TM1株、TM2株とも、サイレージの好気的変敗を抑制する添加剤として市販化を希望する企業に配布可能。
  • 好気的変敗防止能力としてはTM1株が優れるが、TM2株添加では乳酸含量が高く、開封後の利用時間が短い場合の発酵品質は市販菌やTM1株よりも有利となる。

具体的データ

表1.選抜乳酸菌株の生理的・生化学的特性 図1.好気的条件におけるサイレージの安定時間

 

図2.貯蔵・好気的変敗によるトウモロコシサイレージの乾物損失

 

表2.地下サイロ(54 m3/本)で調製したトウモロコシサイレージの特性.

その他

  • 研究課題名:ヘテロ発酵型乳酸菌の添加がサイレージの利用性に及ぼす影響
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2004年度
  • 研究担当者:山田明央、張 建国、蔡 義民、小林良次、野中和久、河本英憲、青木康浩、加茂幹男
  • 発表論文等:張ら、特許願2004-226280.