頭数および牛舎内温度が搾乳ロボットの利用効率に及ぼす影響の調査事例

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要約

搾乳ロボットの利用効率は搾乳頭数を多くすると高まる。また、牛舎内の日平均温度が28℃までの範囲であれば、ロボットストールへの入室回数は気温の影響を受けない。

  • キーワード:飼育管理、乳用牛、搾乳ロボット、利用効率、温度、行動
  • 担当:畜産草地研・家畜生産管理部・家畜管理工学研究室
  • 連絡先:電話0298-38-8678、電子メール
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ロボット搾乳では、牛がロボットストールへ自発的に訪問・入室するのが前提であるが、搾乳頭数の増加や暑熱が自発的訪問の動機を低下させ、搾乳回数、搾乳量、ロボットの利用効率等を低下させる懸念がある。そこで、夏期に比較的高温になる地域の酪農場で稼働しているL社製搾乳ロボット(ボックス型1基)において、搾乳頭数あるいは牛舎内温度が搾乳ロボットの利用効率(搾乳ロボットが搾乳可能な時間数に対する実際に搾乳した時間数の比)等に及ぼす影響を調査する。

成果の内容・特徴

  • ロボットへの自発的訪問の指標となる1日1頭あたりの入室回数は、搾乳頭数60頭を境界として頭数が少ないほど多くなるが(図1の①~③)、利用効率は低下する(図2)。これは、不要な訪問が増えて、搾乳回数よりもリフューズ回数(搾乳されないで通過する回数)が増加するためである(図3)。一方、搾乳頭数が60~70頭の場合、入室回数は2.0~3.5回程度に収束し、利用効率が0.85以上に維持される。
  • 搾乳頭数が多いほど利用効率は高まるが、入室回数の減少を伴うため1日1頭あたりの搾乳回数が減少する。供試搾乳ロボットは搾乳頭数55~60頭で搾乳回数が2.5~3.0回/日/頭程度の能力と言われており、搾乳頭数を60~70頭に増やすと搾乳回数が2.5回以下となり、搾乳量の低下が懸念される(図3)。しかし、搾乳量は23~27kg/日/頭で維持されることから、当該乳量レベルであれば70頭程度までの増頭に対応可能と推察される。
  • 搾乳ストールへの1日1頭あたりの入室回数は、搾乳頭数が60頭以下の調査期(図4の①~③)を除いた場合において、牛舎内温度の影響を受けずに調査期毎の平均が2.4~3.0回/日/頭で安定して推移している。これより、夏期の牛舎内の日平均温度が28℃程度までの範囲であれば気温の影響を受けずに牛はロボットを訪問する。

成果の活用面・留意点

  • 搾乳ロボット運用のための参考となる。また、温暖地等において搾乳ロボットを導入する際の参考資料となる。
  • 牛群の乳量が調査農家よりも高い場合、70頭以上の搾乳頭数に適応可能か検討を要する。また、牛舎内温度が長期間28℃を超える場合、利用効率が低下する可能性がある。

具体的データ

図1.搾乳頭数が1頭当たり入室回数に及ぼす影響 図2.搾乳頭数が利用効率に及ぼす影響

 

図3.入室回数に対する搾乳回数、通過回数およ び日搾乳量の関係 図4.牛舎内温度が1頭当たり入室回数に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:ロボット搾乳の利用効率調査
  • 予算区分:交付金(所特定:戦略)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:本田善文、長谷川三喜、市来秀之