トウモロコシ黒穂病の抵抗性を安定して検定できる病原菌の圃場接種法

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要約

トウモロコシの4~6葉期に1個体当たり1.0×106細胞/mlの黒穂病菌培養懸濁液を葉身上部から1ml注入し、これを同一個体へ1週間以内に2回実施することにより、圃場で黒穂病は効率よく発病すると共に年次間における品種間の抵抗性差異についても再現性が高い。

  • キーワード:作物病害、トウモロコシ、黒穂病、抵抗性検定法、圃場接種、発病率、草高
  • 担当:畜産草地研・飼料生産管理部・病害制御研究室、飼料作物開発部・ヘテロシス研究室
  • 連絡先:電話0287-37-7556、電子メールohiro@affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

トウモロコシの重要病害の一つである黒穂病の防除対策として、抵抗性育種が進められてきたが、自然発病による抵抗性検定では年次間差や地理的環境に左右される。また、トウモロコシ黒穂病の人工接種には、交配親和性のある2菌株(検定用交配菌株)を混合して苗に注入接種する必要があるが、従来の2葉期の幼苗や10葉期前後の苗への接種方法では、発病程度の再現性や客観性などに問題があるため、人工接種による安定した抵抗性の検定法は確立されていない。
そこでトウモロコシ黒穂病の人工接種による年次間相関の高い抵抗性検定法を目途に、植物の葉齢や接種回数などの接種条件、ならびに草高などの客観的な指標と発病程度との関係について検討し、安定した抵抗性検定法の確立に資する。

成果の内容・特徴

  • 栃木、茨城、長野県産罹病サンプルから得られた各検定用交配菌株は病原性が安定しており、-80℃下で長期安定保存できる。また、振とう培養による大量増殖、濁度測定による細胞濃度の正確な調整により、均一な接種源の短期間での確保が可能である。
  • トウモロコシの4~6葉期に1個体当たり、交配菌株間で等量混合して調整した1.0×106細胞/mlの黒穂病菌培養懸濁液を葉身上部から1ml注入し、これを同一個体へ1週間以内に2回実施する接種法により、圃場において効率よく発病する(図1、2)。発病率の調査は接種後2週から4週の間に毎週実施する。
  • 13のトウモロコシ自殖系統を対象にした上記手法による3年間の圃場検定で、発病率は2002年と2003年、2002年と2004年、2003年と2004年の間で、それぞれr=0.802**、0.706**、0.686**(**:P<0.01)と高い正の相関関係があり、品種間抵抗性差異が再現されたことから、本手法により抵抗性の品種間差異を評価できる(図3)。
  • 接種4週間後、1個体当りの発病程度が著しい品種系統については、草高比(接種区の草高/対照区の草高)も0.85などの低い値を示したことから、本手法では接種後の草高も発病程度の目安となり得る。

成果の活用面・留意点

  • 菌株は、農林水産ジ-ンバンクに登録しており、入手が可能である(MAFF 511454~511459)。
  • 接種後の乾燥を避けるため、接種作業はなるべく夕刻の午後5~7時の時間帯に実施する。
  • 本手法は、ガラス室内においても適用可能である。

具体的データ

図1.接種による圃場での葉身の発病 図2.接種ステージ、接種回数の違いによる発病への影響

 

図3.年次間の発病率の相関

その他

  • 研究課題名:無農薬栽培の長大型飼料作物における病害の発生実態の解明
  • 予算区分:ジーンバンク
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:大久保博人、黄川田智洋、菅原幸哉、御子柴義郎