Trichostatin Aの培地添加によるウシ体細胞クローン胚の体外発生能の改善

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要約

ウシ体細胞核移植において、卵子活性化処理開始後のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤Trichostatin Aの培地添加は、体外発生能が低いドナー細胞由来クローン胚の胚盤胞発生能を改善する。

  • キーワード:ウシ、家畜繁殖、体細胞クローン、Trichostatin A、胚盤胞発生率
  • 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7382
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

体細胞核移植技術は優良家畜の増殖に貢献する技術として期待されている。しかしながら現在のクローン個体の作出効率は低く、効率 的な核移植技術の確立が望まれている。最近、マウスにおいて核移植後にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるTrichostatin A(TSA)を含む培地で胚を培養することにより個体作出率が向上することが報告されている。本研究はウシ核移植においてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 TSAの発生培地への添加が胚盤胞への発生能に及ぼす効果について検討する。

成果の内容・特徴

  • 核移植後にCaイオノフォアで卵子活性化処理開始後、活性化培地および発生培地に計20時間、5nM TSAを添加する。
  • 体外発生能が低いドナー細胞B、Cを用いた体細胞クローン胚の胚盤胞への発生率は、5nM TSA添加により有意に増加する(図1)。
  • TSA添加により作出した体細胞クローン胚の胚盤胞期総細胞数は、無処理の対照区と同等である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 体細胞クローン胚作出のためには様々なドナー細胞が用いられるが、全ての処理が同じでも体外発生能が低いドナー細胞が存在する。本法は体外発生能が低いドナー細胞を用いた核移植において、移植可能胚の効率的な作出に活用できる。
  • TSA培地添加が体細胞クローン胚の受胎能に及ぼす影響については調査が必要である。

具体的データ

図1 体細胞クローン胚の胚盤胞発生能に及ぼすTrichostatin Aの効果

図2 体細胞クローン胚の胚盤胞細胞数に及ぼすTrichostatin Aの効果

 

その他

  • 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
  • 課題ID:221-n
  • 予算区分:交付金プロ(クローン牛)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:赤木悟史、松川和嗣、高橋清也