イタリアンライグラス跡地でのトウモロコシ簡易耕うん同時播種

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要約

イタリアンライグラス跡地を縦軸型ハローとケンブリッジローラ、真空播種機を組み合わせた作業機で簡易に耕うんしながらトウモロコシを播種する技術。作業能率が大幅に向上し、堆肥等をすき込むことができ、慣行法と同等の収量が得られる。

  • キーワード:簡易耕うん、イタリアンライグラス、播種、縦軸型ハロー、作業能率
  • 担当:畜産草地研・飼料作生産性向上研究チーム
  • 代表連絡先:電話0287-37-7801
  • 区分:畜産草地、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

イタリアンライグラスとトウモロコシの二毛作体系は我が国の暖地、温暖地における多収作付け体系として重要であるが、春先にイタリアンライグラスの収穫とトウモロコシの播種に要する作業集中が起こる。これに対応してトウモロコシの不耕起播種による省力化が検討されているが、市販の不耕起播種機では残根量の多いイタリアンライグラス跡地において播種精度が劣り、収量も安定しない。そこで、イタリアンライグラス跡地におけるトウモロコシ簡易耕播種技術として耕うん同時播種技術を開発するとともに、その作業能率、収量等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 試作した作業機は、M社製のケンブリッジローラを装着した縦軸型ハローの後部に、アームで延長された3点リンクを介して真空播種機を装着した構造である(表1,図1)。移動時は、播種機部を油圧でハロー上部へリフトし、作業時は地上へ降ろす。耕うんの作業幅は、2.5mで75cm条間のトウモロコシを4条播種することができる。
  • 試作した作業機を用いた耕うん、播種に関わる圃場内作業能率は13min/10a(作業速度は0.6~0.7m/s)であり、慣行の耕うん整地、播種作業(32min/10a)の2倍以上の能率が得られる(表2)。また、堆肥散布を含む全作業時間は23min/10aであり、慣行法(42min/10a)の1.8倍の作業能率である(表2)。簡易耕作業は、堆肥散布を行うため不耕起播種より作業工程が多くなるが、イタリアンライグラス跡地での不耕起では出芽率向上のためにディスクハロー作業が必要であり、簡易耕播種作業と不耕起播種作業は作業能率が同等である(表2)。
  • 試作機を用いた場合のトウモロコシの乾物収量は慣行のプラウ耕播種された場合と同等である(表3)。簡易耕播種で堆肥を施用した場合の収量は2.0 t/10a、堆肥を施用しなかった場合は1.6t/10aであり、堆肥による増収効果が認められ(表3)、堆肥の施用が困難な不耕起播種作業と比べる資材費削減等のメリットがある。

成果の活用面・留意点

  • トウモロコシと冬作牧草の二毛作体系でのトウモロコシ播種に利用可能である。
  • 裸地や既耕地では、播種の前に培土板を取り付け、畝を作ることができるため、突然の激しい雨に対する発芽のリスク回避にも活用できる(図1)。
  • イタリアンライグラス跡地での使用の場合、残根等の詰まりに起因して縦軸型ハロー部にかかる負荷が大きくなるため、耕深を15cmより浅くする事が望ましい。当該作業機は88kW程度のトラクタを必要とする。

具体的データ

表1 試作機の諸元

図1 簡易耕と播種作業機

表2 各播種作業体系に使用した作業機と能率

表3 生育調査

その他

  • 研究課題名:飼料生産性向上のための基盤技術の確立と土地資源活用技術の開発
  • 課題ID:212-e.1
  • 予算区分:基盤、委託プロ(えさ)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:住田憲俊、澤村 篤、伊吹俊彦、井上秀彦、細川 寿(中央農研)