ウシ雄性発生胚の作出方法

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要約

除核卵子の透明帯を除去し、通常のウシ体外受精より高い精子濃度(25×106/ml)で媒精することでウシ雄性発生胚が効率的に作出できる。

  • キーワード:ウシ、家畜繁殖、雄性発生胚、精子濃度、透明帯除去
  • 担当:畜産草地研・高度繁殖技術研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7382
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

胚発生における母方および父方遺伝子の役割の解明、新規インプリント遺伝子の探索、ゲノムインプリンティングの異常による疾病の解明等のために、受精胚だけでなく雌性単為発生胚および雄性発生胚を併せて解析することにより、研究の大きな進展が期待される。雌性単為発生胚は、化学物質により容易にその発生を誘起することが可能なため、様々の動物種でこれまで報告されているが、家畜における雄性発生胚の作出法についての報告は非常に少ない。そこで本研究では、ウシ雄性発生胚の効率的な作出法について検討を行う。

成果の内容・特徴

  • 除核卵子の透明帯を除去し、通常のウシ体外受精の精子濃度である5×106/mlより高濃度の25×106/mlで媒精する。
  • 除核卵子への媒精時の精子濃度(5×106/ml:低精子濃度,25×106/ml:高精子濃度)および透明帯の有無が前核形成に及ぼす影響を調べると、透明帯除去卵子を高精子濃度で媒精する本法において、2前核形成率が高い(40.0%)傾向にあり(図1)、二倍体胚を効率的に作出できる。
  • 本法により、体外受精と同等の胚盤胞期胚への発生率で、雄性発生胚を作出することができる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • ウシ雄性発生胚は、胚発生における父方遺伝子の役割を調べる上で有効なモデルになる。
  • 本法では、透明帯を除去するので、割球の接着が胚発生に重要となる。そこで、4-well dish 内にニードルを用いて小孔を作り、それぞれの小孔に卵子を入れて培養するWOW (Well of Well) 法を用いる必要がある。
  • 個々の種雄牛により最適な精子濃度が異なる可能性がある。

具体的データ

図1 ウシ除核卵子の媒精15時間後の前核数

図2 体外受精および雄性発生胚の体外発生率a,b 異符号間に有意な差があり(P<0.05)

その他

  • 研究課題名:高品質畜産物生産のためのクローン牛等の安定生産技術の開発
  • 課題ID:221-n
  • 予算区分:交付金プロ(クローン牛)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:松川和嗣、赤木悟史、金田正弘、渡辺伸也、永井卓
  • 発表論文等:松川ら (2008) 日本胚移植学雑誌 30:127-133