雌雄同時に制限を付加した制限付き選抜のための理論と汎用プログラム

要約

希望改良量を達成するための選抜や最適値が存在する形質の選抜に用いられている線形計画法を理論的に改良し、その効果をコンピュータシミュレーションによって検証するとともに、そのための汎用プログラムを公開している。

  • キーワード:制限付き選抜、線形計画法、コンピュータプログラム
  • 担当:畜産草地研・家畜育種増殖研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8611
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

希望改良量を達成するための選抜や最適値が存在する形質を選抜(制限付き選抜)する方法の1つに、線形計画法を利用した制限付き選抜法がある。この方法を理論的に改良することで、家畜の育種改良の効率化を図る。また、その効果をコンピュータシミュレーションによって検証する。

成果の内容・特徴

  • 雄集団と雌集団のそれぞれに制限を付加した線形計画法により候補個体を選抜する方法(従来法)に理論的な改良を加え、雌雄同時に制限を付加する選抜法(改良法)を考案した(表1)。
  • 改良量を制限しない形質では、改良法は従来法に比べ、遺伝的能力の高い個体が選抜される。一方、改良量を0に制限する形質では、選抜法による差はみられないものの、改良法は従来法よりも標準偏差が小さくなる傾向にある(表2)。
  • 改良法は選抜集団のサイズが小さいほど、従来法よりも有効である(表2)。
  • 雌雄同時に制限を付加した線形計画法により候補個体を選抜するための汎用プログラム(LPRS)を畜産草地研究所ホームページより公開している。本プログラムは従来法の計算も実行できる。

成果の活用面・留意点

  • 本選抜法は豚や鶏などの系統造成など、集団のサイズが小さい閉鎖集団において特に有効である。
  • 畜産草地研究所ホームページより、本選抜法の実行形式の汎用プログラムとマニュアルをダウンロードすることができる。

具体的データ

雌雄毎に制限を付加した線形計画法により候補個体を選抜する方法(従来法)と雌雄同 時に制限を付加する選抜法(改良法)の比較

異なる2種類の制限によって選抜された個体の平均育種価と異なる個体が選 抜される割合

その他

  • 研究課題名:家畜生産性向上のための育種技術及び家畜増殖技術の開発
  • 中課題整理番号:212j
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:佐藤正寛、佐々木修、石井和雄、西浦明子
  • 発表論文等:1) 佐藤 (2007) 日豚会誌、44(3): 136-140
                       2) 佐藤 (2008) 日豚会誌、45(2): 65-69
                       プログラムのダウンロードサイト http://www.naro.affrc.go.jp/nilgs/contents/program/lprs/index.html